研究課題
(研究の目的)ヒトiPS細胞を用いた心臓再生治療における治療後致死性不整脈の発生について、中動物病態モデルおよび心臓安全性評価システムを用いて評価し、安全性のより高いヒトiPS細胞由来心臓構成細胞の細胞生物学的・組織学的構造について包括的に検討する。(研究の成果)マイクロミニピッグの冠動脈二重結紮法により心筋梗塞を作製し、2週間後に再開胸し、iPS細胞由来心臓組織シートを免疫抑制剤投与下に移植した。その後8週間までの経過観察において、移植による心機能改善を認めた。不整脈に関して定期的なホルター心電図により評価したところ、偽手術群では複数の個体において致死性不整脈である心室頻拍の出現を認めたのに対し、移植群では全個体において致死性不整脈の発生は認めなかった。致死性不整脈のサロゲートマーカーである1心拍毎のQT間隔のばらつき(STV)については、移植後1週でシート移植群での有意なSTV低値を認めた。これらの結果により、iPS細胞を用いた心臓再生医療の安全性を、ヒトに近い心拍数を持つミニブタを用いて電気生理学的に示すことができた。また、in vitroの検討として、ヒトiPS細胞から誘導した心筋細胞と間質細胞をそれぞれ混合したシートにおいて、細胞外多電極電位測定装置およびモーションベクターによる二次元生細胞動態解析により、不整脈誘発が知られている薬剤投与に伴う、代表的なリエントリー型致死性不整脈であるTorsade de Pointesの発生を示すことができた(Kawatou, Nat Commun 2017)。これらの成果は、iPS細胞を用いた心臓再生医療における不整脈発生に関する基礎研究的基盤知見を与えるものであり、不整脈抑制戦略にとって大変重要な成果であるといえる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Nat Commun
巻: 8 ページ: 1078
10.1038/s41467-017-01125-y