研究課題/領域番号 |
15K10210
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中田 朋宏 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (00559685)
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研究分担者 |
池田 義 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40281092)
田畑 泰彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心筋疾患外科学 / iPS細胞 / バイオエンジニアリング / 拡張型心筋症 |
研究実績の概要 |
本年度は前年度に引き続きヒトiPS細胞由来心臓組織シートの慢性期心筋梗塞ラットモデル、拡張型心筋症ハムスターモデルへの移植を行い、更に亜急性期心筋梗塞ブタモデルへの移植も施行し、それぞれ機能回復効果を調べた。ヒトiPS細胞から心臓構成細胞(心筋細胞、血管内皮細胞、血管壁細胞)を、「心筋及び内皮細胞同時分化誘導法」(Masumoto, Sci Rep 2014)にて分化誘導した。誘導から15日目に細胞を回収し、温度感受性培養皿に播種して心臓組織シートを作製した。温度感受性培養皿にて4日間培養し、完成した心臓組織シートとゼラチンハイドロゲル微粒子を用いて積層化を行った。ラット慢性心筋梗塞モデルには12穴の温度感受性培養皿で作製したシートを15層に積層し、心筋梗塞領域に貼付した。ハムスター心筋症モデルには同じく12穴の温度感受性培養皿で作製したシートを5層に積層し、左室全体に貼付した。ブタ亜急性期心筋梗塞モデルでは10cmの温度感受性培養皿で作製したシートを5層に積層し、4つの積層体を心筋梗塞領域に貼付した。貼付後は定期的に心臓超音波検査にて心機能を観察したが、ラットモデルやブタモデルでは梗塞領域の縮小化と心機能の改善を認め、ハムスターにおいては進行性に増悪する心臓組織の線維化と心機能低下を抑制することが出来た。一方、京都大学iPS細胞研究所ではHLA(Human Leukocyte Antigen : ヒト白血球型抗原)ホモ接合体ドナーから提供された細胞からiPS細胞(HLAホモiPS細胞)を構築しており、それを臨床応用する方向で貯蓄を進めている。上記分化誘導法を用いてHLAホモiPS細胞からも心臓構成細胞を分化誘導し、温度感受性培養皿で心臓組織シートを作製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトiPS細胞から心臓組織シートを作製し、ゼラチンハイドロゲル微粒子を用いて積層化することが出来た。小動物の心疾患モデルにて治療効果を確認した後、中動物(ブタ)の亜急性期心筋梗塞モデルでも治療効果を確認した。臨床応用に向けてHLAホモiPS細胞を用いた心臓組織シートの作製にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
小動物及び中動物への移植実験で心機能改善・心機能低下抑制効果を認め、その機序を解明するため、心臓組織シートから分泌されるサイトカインやエキソソームの解析を行う。ヒトへの臨床応用を視野に入れ、HLAホモiPS細胞から作製した心臓組織シートの積層体を動物に移植し、造腫瘍試験などの安全性試験を行う予定である。
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