研究課題
呼吸停止モデルを用いて心停止を得たブタを30分間常温虚血に置き、その後心臓を調節再還流することで蘇生し、心機能の評価を行った。動物実験ではブタを用いて前述のごとく実験を行ったが、呼吸停止によって心停止し30分経過したのちに適切な血液心筋保護で再還流を行うことにより(調節再還流)、心臓を蘇生することが可能であることが証明された。この中で、右室機能をコンダクタンスカテーテルによりEmaxを測定し、蘇生後の心機能が心停止前とほぼ同等であることが証明された。またもう一つの右室機能の指標である心拍出量も蘇生後でも維持されていることが示された。心臓を蘇生する段階で、冠還流のための血液心筋保護液中の乳酸値は適切な再灌流法により漸減することが示され心筋代謝の面からも、再灌流の重要性が示されるとともに、乳酸値の低下が再還流の至適時間を知る上で重要であることがわかった。言いかえれば、再還流を行っていく段階で、乳酸値の低下をもって再還流が十分行われたことと判断できると考えられた。心停止ドナーからの心臓移植を臨床応用するには、摘出した心臓が移植に耐えうる心機能を有するかを植え込みする前に判断することが重要であるが、指標の一つとして乳酸値が使用できる可能性が示された意義は大きいと考える。また、移植心に対して心臓由来の自己幹細胞を冠動脈に注入して心機能の改善を図ることを目標としたが、まずは小児単心室患者の重症心不全に対して、自己幹細胞の冠動脈注入により心機能の改善を認めるか評価した。結果として、心機能は3ヶ月目から改善し、1年後でも維持されることが証明された。この結果より、心臓由来の自己幹細胞移植は、臨床で安全に実施でき、かつ心不全に対する有効な治療法であることが証明された。今後、心臓移植への幹細胞移植の応用が期待される結果となった。
すべて 2017
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Circ Res
巻: 120 ページ: 1162-1173