研究課題/領域番号 |
15K10218
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
美甘 章仁 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30372709)
|
研究分担者 |
濱野 公一 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60263787)
藏澄 宏之 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (50645116) [辞退]
細山 徹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20638803) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心筋幹細胞 / 細胞シート / 幹細胞老化 |
研究実績の概要 |
高齢化社会を迎え、本邦における、慢性心不全による入院患者数は11万人/年に上るまで増加している。重症心不全患者に対する根本的治療法には心臓移植が考えられるが、適応患者が65歳未満であり、侵襲やドナーの不足を考慮すると現実的な選択肢ではない。代替え治療として、人工心臓や幹細胞移植治療が期待されている。ヒト心筋幹細胞(CDC:Cardiosphere-derived cell)の領域ではCADECEUS試験で陳旧心筋梗塞に対する自家幹細胞治療が研究されている。この試験では組織レベルで血管新生を認めるなどの治療効果を認めるものの、臨床効果はごく僅かである。この原因の一つとして、高齢者の心筋幹細胞が“幹細胞老化”に陥り、分化能や自己複製能、血管新生誘導能が著しく低下している可能性が考えられる。 平成29年度にはヒトCDCを用いて、自家CDCシートの機能低下、すなわち、幹細胞老化を起こしうる機序についての研究を行った。この研究では、老化の影響を検討するために2-83歳のヒト心臓組織から単離したCDCを用いた。結果として、ヒトCDCは加齢に伴いSFRP1の発現が亢進していることが明らかとなった。またSFRP1の亢進が細胞増殖に関わるWntシグナルを阻害し、自己複製能と血管新生誘導能に影響を与えている可能性が示唆された。一方、組換えSFRP1の投与は、p16などのマーカーのレベルの上昇といった、若年患者由来のCDCにおける細胞老化を誘導することを示した。このSFRP1の発現亢進は抗がん剤によるDNA損傷でも引き起こされることから、加齢で蓄積されたDNA損傷によるSFRP1発現亢進が、幹細胞老化の本態である可能性が示唆された。
|