研究課題/領域番号 |
15K10222
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10196834)
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研究分担者 |
千本松 孝明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70216563)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ファロー四徴症 / iPS細胞 / 胸腺 |
研究実績の概要 |
(目的)小児心臓外科手術において、ファロー四徴症手術の際、術野確保のため一部破棄される胸腺組織を用いて、1)胸腺 線維芽細胞の分離培養法を確立する。2)その胸腺 線維芽細胞を用いて、human iPS 細胞誘導法を確立する。3)更に誘導された胸腺由来 human iPS細胞を用いて中胚葉(脈管系臓器)誘導を確立する。4)iPS細胞、誘導された中胚葉(心筋細胞群)の、遺伝子発現を含めたepigenomeを解析し、TOF発生メカニズムを解析する。
(実施計画) 切離剥離された胸腺組織(約10g程度)より分別培養された初代線維芽細胞は、培養系が確立され、十分に確保された。予備実験として将来の臨床応用を考慮し、エピソーマルベクターを用いたnon-integration methodとして3つのベクター(pCXLE-OCT3/4-shP53, pCXLE-HSK, pCXLE-HUL)を用いたiPS細胞誘導を行い、十分量のiPS細胞コロニーは確保出来ることは確認出来た。そのiPS細胞の品質としてq-PCRによる代表的な未分化遺伝子(OCT3/4、SOX2, NANOG, KLF4, C-Myc)の発現を確認したが、正常組織から誘導されたiPS細胞と比較しても有意な差異は認めず、中胚葉分化誘導(心筋分化誘導)においても心筋細胞群が誘導された。ここまでの段階で正常組織から誘導されたiPS細胞との差異は認めてないため、RNA-seqやwhole genomeを用いたDNA損傷のレベルの確認を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように、胸腺-初代線維芽細胞-iPS細胞誘導-中胚葉誘導の予備実験は成功し、正常組織からのiPS細胞との有意な差異は認めていない。むしろ、小児患者であるため初代線維芽細胞の成長は早く、iPS細胞誘導に於いても十分なコロニー形成は生じ、中胚葉誘導も認める。すなわち、iPS細胞として良質であり、少なくとも中胚葉誘導は起こることは確認出来ており、iPS細胞として一連のスクリーニングでは異常は認めていない。その為現在パイロットスタディとしてRNA-seqやwhole genomeを用いたDNA損傷のレベルの確認を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
興味深いことに、TOF 患者の胸腺組織を用いたiPS細胞誘導、心筋細胞群誘導(中胚葉誘導)は成功している。少なくとも現時点では何ら変化は示していない。TOFは, 肺動脈狭窄(漏斗部狭窄)、心室中隔欠損、右心室肥 大、大動脈騎乗の4つの奇形を合併している先天性心疾患であるが、その多くは染色体異常が存在せず原因不明であるため、当然の帰結かも知れない(染色体異常が存在しないため)。その為パイロットスタディとしてRNA-seqやwhole genomeを用いたDNA損傷のレベルの検討やepigenomicな評価を行って行く予定であるが、問題点として中胚葉誘導は十分である点にある。細胞形成レベルには問題はなく、その後の器官形成に問題が存在している可能性はある。その差異が、十分に表現出来る実験系を組む必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
胸腺-初代線維芽細胞-iPS細胞誘導-中胚葉誘導の予備実験は成功し、この段階で正常組織から得られたiPS細胞との差異が認めれず、次のステップとして実験を考える時間が必要となった。当初は、TOF患者胸腺由来線維芽細胞からiPS細胞、中胚葉系細胞が誘導されることを確認し、問題が生じることを仮説としていたが、極めてスムーズに誘導が可能であった。不可能であればそのメカニズムを検証し もしくは誘導される変法を検証する予定であったが、少なくとも細胞レベルでは心筋細胞誘導は生じる。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、パイロットスタディとしてRNA-seqやwhole genomeを用いたDNA損傷のレベルの検討やepigenomicな評価を行って行く予定であり、そのためにbudgetの次年度使用の必要性が生じた。これらの検査の金額は基本的に高額になり、加えてこれらの結果よりさらなる問題点が生じる可能性があり、有効に使用していきたい。
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