研究課題/領域番号 |
15K10223
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北原 大翔 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70594729)
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研究分担者 |
岡本 一真 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10338064)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脱細胞化 / 再細胞化 / 心臓 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生体組織の脱細胞化技術を用いて死体心から新たな移植用心臓を作成することである。脱細胞化の特徴は細胞を全て除去しながらも本来の三次元構造が十分に保持され、細胞成熟に必須な微細血管構造を保つ点である。これにヒト胎児付属物由来の間葉系細胞を生着させ、心筋分化を促すことで移植心の作製が可能と考えられる。最終的には脳死ドナーに頼らない心臓移植治療の実現化を目指して研究を遂行した。 我々はOttらのRat心臓を用いた脱細胞化によるマトリックスの保持・臓器の作製法に習い(Ott HC, Nat Med, 2008)、共同研究者の慶應義塾大学医学部一般・消化器外科の八木らがすでに肝臓で確立した脱細胞化・再細胞化のプロトコールを応用して、ブタ心臓の脱細胞化に成功した。最適な脱細胞化のプロトコールを得られるよう、温度、流速、圧など環境の計測を行える独自の効率的なシステムを開発し、この脱細胞化システムを用いて、チャンバー内での心臓の脱細胞化を定型化した。得られた脱細胞化心臓3次元細胞骨格を組織学的に解析した。組織標本において脱細胞化充分に行われているが細部に渡り十分に細胞を保持するマトリックス構造を有しているか、組織染色を用いて評価した。 脱細胞化心臓の病理組織学的評価により、三次元構造を保つ細胞外マトリックスが十分に残存し、細胞成分が効果的に除去されていることが示された。又、脱細胞化心臓を他のブタの腹部大動脈、下大静脈にそれぞれ吻合し異所性移植を行い、吻合可能な強度を持つ血管構造が保たれていることを証明するとともに、血管内造影検査にて冠動脈および心腔内の血流を確認した。脱細胞化骨格と人工血管、あるいは生体組織との吻合は問題なく施行可能であり、血液のリークなどは認めなかった。しかしながら、再還流直後に認められた冠動脈の血流は、5日後に移植脱細胞心臓を採取した際には完全に血栓により途絶してしまっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物の手配に予想以上に時間がかかってしまい、予定数の動物実験を行うことができなかった。今年度は初めから年間の動物実験の予定を立てて研究を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
清潔環境下での培養液の還流ルートを経冠動脈的に構築し、ブタ心臓細胞骨格に段階的、あるいは直接間葉系幹細胞を注入し再細胞化を行った。再細胞化後の病理学的評価から生着率の検討を行った。得られた再細胞化心臓を他ブタの腹部大動脈・下大静脈間に異所性移植して、血管の疎通性について再度検討を行った。移植後、同様に冠動脈に血栓閉鎖を認めた。脱細胞化臓器、再細胞化臓器の血栓予防が次なる課題であると考えられた。また、再細胞化の手法や細胞の種類に関する研究を継続して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究費は主として、消耗品と国内旅費、外国旅費、謝金、印刷代、研究成果投稿料、会議費などに利用される予定であり、設備備品費を申請する予定は無い。 当研究室では、研究施設はすべて整っており、新規の設備投資は必要とせず、直接研究に関わる経費のみを支出する予定である。
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