研究課題/領域番号 |
15K10227
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研究機関 | 公益財団法人心臓血管研究所 |
研究代表者 |
國原 孝 公益財団法人心臓血管研究所, その他部局等, 研究員 (80725268)
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研究分担者 |
岩崎 清隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (20339691)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己弁温存基部置換術 / 静的圧負荷試験実験 / 大動脈基部形態 |
研究実績の概要 |
研究実施計画書に基づき、自己弁温存基部置換手術についての静的圧負荷試験実験を実施した。4つのモデルとコントロール群を対象とした。4つのモデルは、straight graft またはvalsalva graftを用いたreimplantationモデル(以下DS群、DV群)。straight graftでremodeling法のみ(YO群)、または弁輪固定を施したモデル(YA群)。 AVJに関して、YO群は大きく、他の基部手術群との比較にても有意差を認めた。Valsalvaは、DV>YO>YA>DSの順で大きさに有意差を認めた。STJは、YA群でDS群、DV群より小さい結果であった。一方でYO群では、DS群とDV群と比較して有意差を認めなかった。STJ/AVJ比について、YO群またはYA群においても、DS群,DV群と比較し有意差をもって小さい結果であった。Valsalva/AVJは、DV群>YA群>YO群=DS群の順であり、YO群とDS群で有意差を認めなかった。Distensibilityについて、AVJとValsalvaでは、各群で有意差を認めなかった。STJのDistensibilityはYOとDVで大きな値であったが、有意差を認めたのは、DV群対C2群間のみであった。扁平率に関しては、YA群、DV群で低い扁平率であったが、各基部置換群間では、有意差は認めなかった。 YA群は、YO群の弁輪固定効果を補強したモデルであったが、Valsalva洞の膨隆度はDV群の方が大きかった。また、STJ/AVJ比は、YO群、YA群より、DS群、DV群の方が有意に大きい結果となった。Valsalva径、Valsalva洞の突出は、いずれもDV群で有意に大きい値であった。扁平率とDisitensibilityは、基部置換モデルの群間で有意差は認めなかった。この研究からDV群が弁尖負荷を与えないモデルと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々の研究は、reimplantation法とremodeling法の生理学的な差異を明らかにする ことを目的としたものである。実験方法には、静的圧負荷実験、拍動下での動的圧負荷実験の2段階でそれぞれの結果を明らかにすることを目的としている。さらには臨床から得られるデータも統合することで、各モデルの特徴についてのメカニズムを明らかにすることを目的としている。 実験2年が終了して、現在静的圧負荷実験のデータをまとめた。その結果、静的実験では、大動脈弁輪径が、remodeling法で弁輪部処置をしていない群において、80mmHg 120mmHgにおいて、25.95㎜±0.99、27.17±1.02とそのほかのモデルより圧変化に対する影響が大きい傾向であった。Distensibilityという言葉で弁輪部拡張能力を表現すると、YO群、コントロール群とほぼ同様の結果であった。一方でDV群においてもある程度の弁輪部拡張能力があることが示された。これらをもとに動的回路を2016年度は作成した。現在、拍動回路に取り付けて実験、測定している段階である。 動的実験モデルの課題は、モデル組織をどこまで残すのか、また測定部を拍動のときに再現性をもって実施することが困難であることが課題であり、実験進捗状況がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
動的試験回路では、基部置換モデルにおける弁応答性、基部Compliance、AVJの扁平率が、静的試験回路結果と比較し検討することが目的である。各項目の測定方法は、high speedカメラによる弁尖運動の撮影とエコーによる弁尖運動の撮影を予定としている。本年度は実験回路の問題点を明らかにして修正してく方針。実験開発に際しては、月に2回のmeetingを実施して動的試験回路実験を施行して、本年度に実験結果をまとめていく予定としている。
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