研究課題/領域番号 |
15K10234
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 藤夫 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20375497)
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研究分担者 |
兵藤 一行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60201729)
松下 昌之助 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70359579)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 寒冷刺激 / 血管反応 |
研究実績の概要 |
「冷え性」の原因はいまだに不明である。我々の研究では、寒冷刺激に対して血管は拡張し、その血管反応に性差があることを、従来の血管造影検査と比較して10分の1程度の血管径(20μm程度)まで評価が可能な放射光血管造影を用いて、血管反応を可視化し報告した。この血管反応の性差が、「冷え性」に関与している可能性が高いと考えている。本研究では、寒冷刺激に対する血管反応の性差の原因を検討することを目的とした。 血管拡張反応の機序を検討する目的で、要因として推測した因子の各拮抗剤を使用し、寒冷刺激前後に放射光血管造影を行うことにより血管径を測定した。最も強力な血管拡張因子として、血管平滑筋細胞を弛緩させる、一酸化窒素(NO)がある。その合成酵素阻害剤であるL-NAMEを投与した。また、自律神経系では、血管は交感神経により支配されており、β2受容体刺激が血管の弛緩をもたらす。β2受容体の増強が血管拡張に働くため、非選択的β遮断薬であるpropranololの投与を行った。 各薬剤をラットに投与し、放射光血管造影を用いて寒冷刺激前と寒冷刺激60秒後の下肢を撮像し下肢末梢の血管径を計測比較した。L-NAME投与群の寒冷刺激前血管径218.2μm、寒冷刺激後血管径451μmであり拡張率は107.2%であった。propranolol投与群の寒冷刺激前血管径244.2μm、寒冷刺激後血管径441μmであり拡張率は81.4%であった。 L-NAME、propranololの投与を行っても、寒冷刺激により血管は拡張した。この結果より、寒冷刺激に対する血管拡張反応に対して、NOや交感神経が関与している可能性は低いことが示唆された。 機序解明の為には他の因子を検討する必要があり、拮抗薬の投与として、血管は交感神経優位で収縮し、副交感神経優位で弛緩するため、副交感神経の関与を検討する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目の研計画では、拮抗剤による血管拡張反応の検討を、一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤(L-NAME)、非選択性β遮断薬(propranolol)、副交感神経拮抗剤(Hexamethonium)の投与で予定していた。L-NAME、propranololの投与(特に、強力な血管拡張を有するNOの阻害剤であるL-NAMEの投与)で血管拡張が抑制されると期待していたが、拡張は抑制されなかった。よって、関与している可能性があるとして考えている、副交感神経拮抗剤の投与実験が必要である。また、当初の予測と実験結果が異なる結果となった場合には、さらなる原因検索が必要となる。 また、抑制を認める拮抗薬が判明し機序が推測されれば、次の研究としては、拮抗薬を雄性・雌性のラット(さらに研究2年目に予定している卵巣摘出ラット)に投与し比較検討する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
寒冷刺激に対する血管拡張反応の拮抗剤の判明による機序の推測を行う事を早急に進めていく必要がある。また、血管反応にホルモンにも関与している可能性があると考えているため、寒冷刺激血管拡張反応の機序の解明を進めるとともに、性差の原因について、研究2年目に計画している、雄性群・雌性群・卵巣摘出群のラットについて、評価を行っていく方針とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
故障により使用不能と判断していたレーザードップラー・積極型レーザー血流計(OMEGAWAVE)を購入する予定であったが、時間と費用を要したが修理可能で有り、購入よりも安価で済むと判断し購入を見送った。また、購入予定であるサーモグラフィーを購入していないため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
レーザードップラー装置を使用継続するが故障が連続するようならば新規購入を検討する。また、その使用状況に応じてサーモグラフィーを購入する予定である。
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