「冷え性」の原因はいまだに不明である。これまで我々の研究では、寒冷刺激に対して血管は拡張し、その血管反応に性差があることを、放射光血管造影を用いて報告した。この血管反応の性差が「冷え性」に関与している可能性が高いと考えている。 本研究では、寒冷刺激に対する血管反応の性差の原因を検討することを目的とした。 1年目の研究計画では、血管反応の機序解明に主眼をおいており、寒冷刺激の対する血管拡張反応の機序に係わると推測した各因子の拮抗剤を投与し、放射光血管造影検査で血管反応を描出することにより血管径を測定した。各薬剤をラットに投与し、放射光血管造影を用いて寒冷刺激前と寒冷刺激60秒後の下肢を撮像し血管径を計測比較した。平成27年度には、NO合成阻害剤であるL-NAMEと非選択的β遮断薬であるpropranololの投与を行ったが両者ともに血管の拡張を抑制(拡張率107.3%、81.4%)することができなかった。 最も有力であると判断していた拮抗剤に抑制効果を認めなかったため、本年度は、最も強力な血管拡張因子として血管平滑筋細胞を弛緩させるNOは濃度依存性に影響を与える可能性を考慮しL-NAMを10mgから50mgへ増量し同様に撮像した。50mgに増量しても血管拡張率は86.2%であり、拡張を抑制することはできなかった。次に副交感神経拮抗剤であるHexamethonium(1mg/kg)を用いた。観察した血管によりばらつきがあったが、拡張(96%)を認めており抑制効果はないと判断した。 これまで用いた、NO合成阻害剤、非選択性β遮断薬、副交感神経拮抗薬では寒冷刺激による血管拡張反応を抑制することができず、機序に関与していない可能性が高いと判断する。さらなる検討が必要と考える。
|