研究課題
オートファジーの破綻により細胞内恒常性維持が破綻し、酸化ストレス亢進やゲノム不安定化が起こると、臓器障害や腫瘍促進などの疾患を発生する可能性がある。大動脈瘤や腫瘍といった加齢に伴う疾患において、オートファジーの破綻が疾患の発症や臓器障害に及ぼす影響を解明するために肺癌、血管内皮障害を対象としてその分子機構と病態生理学的意義の解明を目指した。細胞レベルでの解析としてがんでは肺扁平上皮癌の5種類のcell line(Sq-1, LK-2, LC-1/sq, EBC-1 and RERF-LC-AI)を、血管内皮障害モデルとして糖尿病マウスを用いた動物モデルと培養実験としてhuman vascular smooth muscle cells (HVSMC)を用いて研究を行った。1.肺癌細胞における解析:肺癌細胞株を用いてグルタミン依存性増殖、mammalian target of rapamycin complex 1 (mTORC1)活性、オートファジー誘導能に関してグルタミノリーシス抑制後の変化を解析した。LC3-IIレベルを オートファジー誘導能の指標をして測定したところ、グルタミノリーシスを抑制することではmTORC1シグナル抑制とオートファージ誘導が観察され、その結果として細胞増殖が抑制されることが判明した。腫瘍増殖におけるオートファジーの重要性を示すデータと考えられる。2.血管内皮障害モデル:糖尿病マウスモデルでは血管内皮が虚血や加齢などのストレスに曝されるとp53の発現が増強することが判明した。オートファジーではp62が関与すると考えられているが両者の関係を検討中である。HVSMCを用いた培養実験でオートファジーの分子変化があるか確認中である。
3: やや遅れている
細胞レベルの解析はおおむね順調であるが、人検体、動物モデルでの解析が遅れている。
細胞を用いた解析で成果が得られているが、血管内皮モデルではp53とp62のオートファジーにおける関連を検討する必要がある。さらに今後は人の検体(主に肺癌検体と大動脈瘤の組織)を用いて細胞での解析結果と同様な結果が得られるかを検討する。
細胞を用いた解析が主体であったため、動物や人検体で計上した使用額が少額であったため。
次年度は人検体を用いた解析を予定しており、試薬を含め消耗品で使用予定。
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