研究実績の概要 |
冠動脈バイパス、下肢バイパスに用いられる静脈グラフト閉塞の主な機序は吻合部での内膜肥厚が原因と考えられている。 薬剤溶出ステントで使用されているSirolimus(ラパマイシン)は、血管平滑筋の増殖を抑制すると報告されている。研究者自身の経験では、このSirolimusは血管平滑筋において増殖因子(EGF,PDGF等)の刺激だけではなく、細胞外基質の刺激(コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなど)による、細胞遊走も強力に抑制することを確認している。 そのため、Sirolimusは再狭窄予防薬と期待された。しかし、実際の臨床上では、閉塞した静脈グラフトを検討すると内膜肥厚に加え、重度の石灰化病変を認めることが多い。 この石灰化もグラフト閉塞の原因のであると予測され、石灰化をきたすメカニズムを解明しシグナリングを抑制することが可能であれば、グラフト開存率の向上につながると考えられる。最近では、血管平滑筋において石灰化の原因は糖化蛋白終末物(advanced glycation end products:AGE)があげられており、そのシグナリングを阻害することにより石灰化を制御できることが予測される。今回、新たな静脈グラフト開存率の向上を目的とした石灰化抑制法として、このAGEのレセプターであるRAGEを標的とする遺伝子治療を計画した。大動脈平滑筋細胞の培養細胞においてAGEは石灰化を誘導可能であった。そのため培養細胞において、AGEシグナリングの制御は石灰化を抑制する可能性が高いことが予測された。
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