研究課題
(研究の目的)ヒトiPS細胞由来の血管内皮細胞および血管壁細胞の局所投与による血管再生効果を検討し、そこから近い将来予想される医療用iPS細胞の実用段階に向けて技術的基盤を確立することを目的とした。(平成28年度の研究内容)非疾患・免疫抑制マウス下肢虚血モデルは、大腿動脈の結紮および完全除去を行うことにより作製した。また、ヒトiPS細胞から血管内皮細胞を高効率に誘導する方法を本年度に確立した(Ikuno, PLoS One 2017)。これらのヒトiPS細胞からの血管内皮細胞および血管壁細胞を分化誘導により作製し保存しておいた。虚血モデルへの細胞投与は筋肉注射による局所投与であるが、細胞単独ではなく、移植後の生着効率の改善を期待するため、Drug Delivery Systemとしてゼラチンを用いることとした。細胞とゼラチンの混合方法については、適切な細胞活性効果および生着効果が得られる方法を電子顕微鏡等を用いて検討した。実際のヒトiPS細胞の移植検討の前段階として、ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いてゼラチンと混合し、下肢虚血モデルマウスに移植し、その生着効率の検討を行い良好な結果が得られた。引き続き、ヒトiPS細胞由来血管内皮細胞および血管壁細胞のゼラチンを用いた局所投与を行い、レーザードプラ血流計による下肢血流評価にて、移植による有意な血流改善効果を認めた。移植群において、下肢の壊死は認めず、良好な治療効果を認めることができた。
2: おおむね順調に進展している
マウス下肢虚血モデルの安定した作製が可能であり、さらにはヒトiPS細胞からの血管内皮細胞および血管壁細胞への分化誘導も安定している。特に本年度は、ヒトiPS細胞からの血管内皮細胞の効率的な分化誘導法を確立することができた。これは本治療法における基礎となる技術基盤である。現在は、実際にゼラチンを用いた細胞の局所投与を行い、良好な血流改善が得られており、さらに組織学的な評価を進めているところである。
マウス下肢虚血モデルに対する移植後の血流改善効果が得られており、さらに組織学的検査を進めることにによりその効果を実証していく。また、糖尿病マウス下肢虚血モデル、中動物における効果の実証を進めていく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件)
PLoS One
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