腹部動脈瘤は大動脈の病的拡張の末に破裂に到る致死性の疾患であるが、有効な薬物治療は未だ存在しない。我々は腹部動脈瘤病態では血管の血圧・壁張力に対する感受性が高まり、慢性炎症が持続することで血管リモデリングが進行すると考えている。一方、我々は心臓においてペリオスチン遺伝子がメカニカルストレスによって発現し、心拡大を誘導することを報告し、複数のマウスの腹部動脈瘤モデルでのペリオスチンの抑制による動脈瘤拡大抑制効果を確認している。本研究では腹部動脈瘤病態におけるペリオスチンの機能を解析し、新しい治療起点を確立することが目的である。 (ApoEノックアウトマウス+アンジオテンシンII負荷モデル)ApoEノックアウトマウスにペリオスチンノックアウを掛け合わせてダブルノックアウマウスを作成した。このマウスを持続的にアンジオテンシンIIをミニポンプによって負荷するとコントロールのApoEノックアウマウスに比してダブルKOマウスでは動脈瘤が破裂して死亡する率は著明に低下していた。また、プラーク面積を比較したところやはりダブルノックアウマウスではコントロールのApoEノックアウマウスと比して著明な抑制作用が観察された。 (ニコチン負荷腹部大動脈モデル)臨床での腹部動脈瘤の大きなリスクファクターである喫煙をミミックしたニコチン負荷腹部動脈瘤が報告されている(Nat.Med.2012)。ApoEKOマウスとダブルノックアウマウスで比較検討した。アンジオテンシンIIの代わりにニコチンを持続的に注入したモデルでも、DKOマウスは腹部動脈瘤の進展や大動脈破裂、動脈硬化が抑制される傾向が観察された。
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