研究課題/領域番号 |
15K10244
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
細山 徹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20638803)
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研究分担者 |
濱野 公一 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60263787)
森景 則保 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (50335741)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重度末梢血管障害 / 細胞移植治療 / 血管新生療法 / 末梢血単核球 / 低酸素プレコンディショニング / アペリン |
研究実績の概要 |
これまでに我々の研究グループは、低酸素刺激により機能賦活化を誘導した末梢血単核球細胞を虚血下肢へ移植することにより、失われた血管の新生が誘導されることを証明してきた。しかし、我々が考案し実践してきた方法によって誘導される新生血管は、重度の虚血部へ十分な血液を供給し得るほどに発達したものではなく、血流改善効果としては不十分だと言わざるを得ない。そこで、従来我々が用いてきた方法に加えて、細胞移植により新生した未熟な血管を血管成熟化因子アペリンを投与することにより成熟化させ、虚血部へ十分な血液を供給する新たな方法論を考案した。 平成27年度は、これまでに血管内皮細胞を作用点とすることが報告されている血管成熟化因子アペリンが、血管平滑筋細胞へも作用するか否かを検討した。その結果、通常状態では発現の見られないアペリン受容体APJの発現が、虚血部の血管平滑筋において一過的に発現することが明らかとなった。このことは、アペリンが定常状態の血管では血管内皮細胞、虚血状態の血管では血管平滑筋細胞に作用することを意味しており、実際、アペリンはErkパスウェイを介して血管平滑筋細胞の遊走を制御していることを明らかにした。さらに平成27年度は、大動脈リングアッセイ系を用いて、機能賦活化した末梢血単核球存在下において、アペリンが血管平滑筋細胞の遊走制御を介して新生血管の成熟化を導くことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、主に培養細胞を用いた実験系を用いて進めたが、大動脈リングアッセイ系も含めて用いた技術・手法の大部分が既に習得済みであったため、技術的なトラブルもほとんどなく概ね計画通り進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られたin vitro実験の成果を元に、平成28年度は下肢虚血モデルを用いた実証試験を進めていく。まずはマウスを用いて計画を進め、成果が得られたらより大きな動物モデル(ウサギ)での実証を行う。具体的には、下肢虚血処理を施した動物モデルに、低酸素刺激により機能賦活化した末梢血単核球の移植と血管成熟因子アペリンを腹腔内投与を同時に行う。移植後にレーザードップラーによる血流測定および組織切片上での血管新生および血管成熟化を観察することで、本法の有用性をin vivoの観点で証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大動脈リングアッセイなど、初めて行う実験用に若干多めに予算を計上していたが、ミスも少なく予想以上に順調に進んだために次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には動物実験を予定しており、細胞移植とアペリンの同時投与の治療効果についての検証に次年度使用額を上乗せして使用する。具体的には、組織切片における血管新生効果の検証時に用いる抗体の種類を増やして、より精度の高い検討を行う。
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