研究課題/領域番号 |
15K10246
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382898)
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研究分担者 |
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
山口 敦司 自治医科大学, 医学部, 教授 (50265287)
川人 宏次 自治医科大学, 医学部, 教授 (90281740)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大動脈二尖弁 / 胸部大動脈拡大 / 二尖弁化 / ミニブタ |
研究実績の概要 |
二尖弁胸部大動脈拡大の要因は、異常血流による血行力学的影響が提唱されているが、ヒト検体は病的拡大を呈する症例のみで、異常血流が大動脈組織に及ぼす初期変化を解析することはできない。二尖弁に伴う胸部大動脈拡大の機序解明目的に、体重変化が少ないミニブタを用いた大動脈二尖弁化モデルの確立を目指した。 2015年4月から2016年3月までに、ミニブタ計8頭で手術実験を行った。手術は、左肋間開胸し、頸動脈送血・頸静脈右房脱血で人工心肺を確立した。上行大動脈遮断後、上行大動脈を横切開し、隣接する大動脈弁尖を6-0針で縫合し二尖弁化した。ミニブタは術後48時間後に安楽死させた。手術前後で、経胸壁心エコーによる二尖弁化の評価を行うとともに、造影CTとMRIを施行し、得られた大動脈形状データと流速データを用い、専用ソフトによるcomputational fluid dynamics解析を行い、壁剪断応力(wall shear stress: WSS)分布変化を計測した。高・低WSS部位の組織変化をHE染色と電子顕微鏡で比較した。 二尖弁化の内訳は、左-無冠尖(LN群)3例、右-無冠尖(RN群)2例、大動脈切開のみ(sham群)3例とした。手術死亡率は0%、48時間死亡率は13%(1/8)であり、術前大動脈弁口面積(AVA):2.3±1.3cm2;、術後AVA: 1.4±0.4cm2で、平均AVA縮小率は44±3%であった。WSS分布はsham群で変化なく、LN型では大彎側を中心に、RN型では後壁~小彎側を中心にWSSの上昇を認めた。電子顕微鏡による内皮細胞とその周囲の観察では、高・低WSS部位に特異的な微細構造上の変化は確認できなかった。一方、sham群を含めたほぼ全ての手術例で、内皮細胞の不正な細胞突起の出現、細胞の一部膨化、基底膜下の軽微な浮腫像、等の変化が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手術死亡率12%(死亡1例は、第1回目症例のみ)と、安定した大動脈弁二尖弁化手術を遂行し、Sham手術群と比較し、術後のWSSの上昇も二尖弁化手術群では確認できた。これらの結果は、大動物を使用した新規実験モデルの確立を示唆するものであり、二尖弁大動脈拡大の病態解明に有用であると思われる。
しかしながら、組織学的検討の結果、48時間モデルでは、人工心肺や手術操作に伴う大動脈壁の変化が強いため、血行力学ストレスが及ぼす初期変化の解析には、さらに長期間のモデルが望ましいことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
48時間モデルのcomputational fluid dynamics解析と組織像の解析を含めた実験結果は、2017年度心臓血管外科学会(東京)で発表した。さらに、詳細なcomputational fluid dynamics解析を、共同研究期間である埼玉大学理工学研究科機械工学科の研究チームと、48時間モデルで実施した。本研究結果は、欧州胸部外科学会などでの発表を目指している。異常血流が大動脈壁に及ぼす血行力学ストレスの解析に関しては、昨年度以降、7日モデルを開始しており、今後継続予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ、当初の予定通り、実験計画が進行したため、平成28年度予算の大部分は使用した。しかしながら、ブタ手術関連費用が予想より低く抑えられたため、少額の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ブタ実験関連費用、もしくは英語論文作成に関する英文校正費用に使用する予定である。
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