研究課題/領域番号 |
15K10250
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
大塚 裕之 久留米大学, 医学部, 助教 (30441645)
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研究分担者 |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
明石 英俊 久留米大学, 医学部, 教授 (80184084)
田中 啓之 久留米大学, 医学部, 教授 (70197466)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 硫化水素 / 腹部大動脈瘤 / 抗炎症作用 |
研究実績の概要 |
1.初年度である平成27年度は、研究を遂行するにあたって、久留米大学倫理委員会に研究内容に関しての審議を受け、腹部大動脈瘤手術時に患者の大動脈瘤切除標本の採取に関する承認を得た。倫理委員会の承認を得た後、腹部大動脈瘤手術患者本人に対して、手術前に十分な説明を行い、同意を得られた患者を対象に、大動脈瘤壁組織の採取を開始した。 2.患者からの採取腹部大動脈瘤壁組織およびマウス動脈瘤モデルの採取組織中の硫化物ガス測定を行うにあたっては、当初の計画通り、ガスクロマトグラフィー法を採用することとした。ガスクロマトグラフィー法では、生体試料における硫化水素の生産活性や不安定型硫黄化物を測定できるが、組織や細胞を破砕することが前提となる。しかし一旦破砕してしまうと、内在性の硫化水素は生体成分に吸収されてしまうため、正確に微量の硫化物を測定することは難しいのが実状である。現在、ガスクロマトグラフィー法検出器には、炎光光度検出器(FPD)、化学発光硫黄検出器(SCD)、センサガスクロマトグラフィー(SGC)検出器の3種類が存在するが、それぞれの検出器の特性を詳細に調査し、本研究において最も高感度に効率良く対象となる組織の硫化物ガス測定が可能な検出器である、半導体ガスセンサを採用することとした。この半導体ガスセンサは、我が国で唯一、高速分離と高感度計測を実現したFIS社(ODSA-P2)の検出器を用いて行うこととし、現在デモ機を用いて検証実験を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画より遅れている最大の理由としては、硫化水素ガス自体の特性が挙げられる。 生体組織内における硫化水素の生産、代謝、酸化、蒸発、そして結合型硫黄への取り込みは、いずれも非常に速やかに行われ、検出されても非常に微量である。研究計画を今後も円滑に進めるため、硫化水素ガス測定機であるガスクロマトグラフィー測定法の特性を十分に理解し、細胞内硫化水素動態をよりリアルタイムで測定できる測定法の検証や実績を慎重把握する必要があり、時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中には、ガスクロマトグラフィー法による硫化物ガス測定の手技、方法を確実なものにすることが大前提である。手技が確立した後、患者からの摘出大動脈瘤組織標本の硫化物をガスクロマトグラフィー法にて測定を行い、ヒト大動脈瘤組織における硫化水素並びに産生酵素の存在を証明する。また、外因性H2S(硫化アリル:diallyl trisulfide、硫化水素ナトリウム:NaHS)存在下またはH2S産生酵素阻害剤(DL-propargylglycine, aminooxyacetic)存在下でのヒト大動脈瘤培養組織の炎症性シグナルに及ぼす影響についても検討する。 同時に、当初の研究計画に挙げていた、大動脈瘤動物モデルとして高脂血症(ApoEノックアウト)マウスにアンジオテンシンIIを持続投与するAngIIモデルを用いて、動物モデルの血漿中及び大動脈瘤壁中の硫化物をガスクロマトグラフィー法を用いて測定し、実験動物モデルにおける動脈瘤組織中の硫化水素、硫化水素産生酵素(CBS、CSE、3-MST)の発現を蛍光プローブ法、Western Blot法等を用いて評価することで、マウス動脈瘤病態モデルにおける血中、動脈瘤壁中の内因性硫化水素および硫化水素産生酵素の発現を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ガスクロマトグラフィーの機種選定にあたり、選定機種の特性を確認し、デモ機での評価を行う必要があり、これに時間を要した
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次年度使用額の使用計画 |
ガスクロマトグラフィー選定機種のデモ機での確認を行った後に購入する予定である。
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