研究課題/領域番号 |
15K10250
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
大塚 裕之 久留米大学, 医学部, 助教 (30441645)
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研究分担者 |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
明石 英俊 久留米大学, 医学部, 教授 (80184084)
田中 啓之 久留米大学, 医学部, 教授 (70197466)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / 硫化水素 / Diallyl trisulfide(DATS) |
研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤手術前のI.Cの際に患者本人に対して十分な説明を行い、同意が得られた患者の腹部大動脈瘤組織の採取を開始した。サンプル入手から分離、洗浄、培養等一連の手順が安全・確実に行える事を確認し、瘤壁組織培養液に外因性H2S donor ,Diallyl trisulfide(DATS), を添加し刺激を行い、培養液中の炎症性シグナルの変化を評価した。評価項目てしては、炎症性サイトカインIL-6の値をELISA法を用いて、外因性H2Sdonor ,Diallyl trisulfide(DATS)刺激前後の変化を評価した。コントロールとしてDMEM+DMSOを用い、DATSの刺激濃度は0.1M,0.01Mとした。 ①瘤壁培養液中のIL-6をPRE,POSTそれぞれ測定POST/PRE比で、DATS刺激によるIL-6抑制効果を評価した。DATS刺激0.1M,0.01Mでは、瘤壁培養液中のIL-6を有意に抑制する効果は認められなかった。以上の結果より、次にDATS刺激前にTNF-α(10ng/ml)を加えることで、培養液中のIL-6が更に増加した状況で、TNF-αを介したIL-6がDATS刺激にて抑制されるかを検討した。この結果、TNF-αの刺激により培養液中のIL-6は増加したが、DATS投与によりIL-6は抑制されなかった。以上の結果よりIL-6産生促進の観点から、TNF-αの刺激は、動脈瘤瘤壁培養液中のIL-6産生を促進したが、この環境においても、DATS投与によるIL-6抑制効果はないと考えられた。
②ガスクロマトグラフィーにて、大動脈瘤壁から発生するH2Sを測定する。 上記①の培養液より発生する硫化水素をガスクロマトグラフィー法にて測定をおこなった。しかしながら、培養容器の密閉性等の問題もあり、培養液中の硫化水素を測定する事は現時点でできていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までにヒト腹部大動脈瘤壁培養に関しては、安定した実験系を確立している。しかしながら、硫化水素ドナーであるDiallyl trisulfide(DATS)の刺激濃度、刺激方法の確立に難渋した。理由として、DATS刺激の濃度、投与方法、培養液との反応時間等に前例がなく、様々な濃度、投与法を試しながら、動脈瘤壁へ最も影響する濃度を確認した。この確認の過程にかなりの時間を要した。また、刺激後に発生すると考えられる硫化水素はガスであり、発生したガスを採取し測定する
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今後の研究の推進方策 |
①DATS投与により腹部大動脈瘤壁の細胞外基質分解亢進を抑制できるかを、ザイモグラムもしくは蛋白定量を用いて動脈瘤壁組織培養中のMMP-9、MMP-2を測定し検討する。 ②引き続きガスクロマトグラフィーにて、大動脈瘤壁から発生するH2Sを測定する。 上記①の培養液より発生する硫化水素をガスクロマトグラフィー法にて測定を行うが、DATSの刺激濃度を更に細分化し、DATS投与により瘤壁より発生するH2S濃度を測定する。 これらの結果よりマウスを用いた動物実験へ移行する計画であったが、DATSによる動脈瘤進展抑制効果が認められず、DATSが動脈瘤形成促進する可能性が証明された場合は、DATSが動脈瘤形成を促進する機序を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遅れにより使用した試薬類、学会発表旅費等の支出が少なく、次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は新たな動脈瘤壁培養を行うにあたり、培養液の購入。MMP-2、MMP-9測定のためのEKISA測定キット、ザイモグラム、ウエスタンブロッティング等の実験に必要な備品の購入に使用する予定である。
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