研究課題
肺癌における胸膜浸潤因子(PL)は予後決定因子の1つである。肺のリンパ流は、肺動静脈や気管支の走行と同様に肺門方向への流れの他に 胸膜に沿った流れがあり、同じ腫瘍径であってもPL1以上であればより進行病期となる。PL因子の最終診断は切除標本の病理検査で行うが、術中診断が可能になれば、術式等の的確な選択、播種性病変があった場合の無用な手術が回避できる。我々は、5ALA(アミノレブリン酸)が、悪性腫瘍内で光増感物質のProtoporphyrin IXに代謝され、励起光に対し赤色色調の発光を呈する事象を利用し、胸膜悪性腫瘍の描出を研究してきた。本年度は、原発性肺癌における胸膜浸潤の有無に対する光学的診断法の研究を行った。手術4時間前に5ALAを経口投与(20mg/Kg)、自家蛍光観察システムを用いて胸膜浸潤の有無を観察した。胸膜浸潤部では、正常組織で発生する緑色自家蛍光と対比し、明瞭な境界線を示した赤色で描出される腫瘍部位が確認できた。Result:原発性肺癌症例で赤色光が確認可能であったのは、pl1~pl3症例は14/14(100%)例の描出であり、pl0症例は10/24例(41.6%)例であった。描出可能であったpl0症例は、術前診断でPL1の症例であり、脈管侵襲因子陽性例が多かった。本手技の感度/特異度/陽性的中率/陰性的中率は各々100%/58.0%/63.1%/100%であり、胸膜浸潤例は有意に赤色蛍光発光を認めた。以上より、精度の高い肺癌胸膜浸潤に対する術中診断が、区域切除等の縮小手術の適応決定に寄与する可能性がある。更に,高精度の局所診断が、光線力学治療(Photo Dynamic Therapy)に応用できる可能性があると考えられた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件)
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