本研究では、臨床肺移植において、レシピエント血中にある移植肺由来の血中遊離DNAを定量することで肺移植後の急性拒絶反応を診断することを目的にしている。生体肺移植では移植前後のドナーとレシピエントの血液を採取し、ドナーとレシピエントのDNAの比較により、日本人で頻度の高い一塩基多型(SNPs)から各レシピエントで検出するSNPsを選定し、ドロップレット・デジタルPCR法(ddPCR)で移植肺由来血中遊離DNAを定量する。そして、移植後14日間の経時的変化と臨床経過を対比する。また、脳死肺移植では脳死ドナーから同意を得ることが困難であるため、同様の検討をレシピエントのみの血液を用いて行っている。当科で保存された血漿は生体肺移植症例が16例(急性拒絶反応:5例、肺炎:5例、安定:6例)であり、それぞれ移植前と移植後14日間の合計240サンプルの血漿が冷凍保存されており、これらの血漿から遊離DNAの抽出とTaqman SNP assayのddPCRにおける至適温度の決定を行っている。また、脳死肺移植では5例(急性拒絶反応:1例、肺炎:1例、安定:3例)で75サンプルの移植肺由来血中遊離DNAを抽出した。また、5つのTaqman SNP assayにおいてddPCRでグラディエントPCRを行い至適温度を決定している。
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