研究実績の概要 |
移植前急性期肺水腫肺(グラフト)モデルを用いた肺移植実験における、体外肺循環システム群(Ex-Vivo Lung Perfusion;EVLP群)と従来法群の比較実験結果を示す。本研究に先立ち実施した、健常群(通常の健常ブタドナー肺を健常ブタレシピエントへ移植)の実験(N=4)では、移植直後の肺機能はP/F ratio = 494(1h),497(2h),484(3h) と安定した良好な結果が得られ、実験者の移植手技により生じるバイアスが最小限であることを確認した。研究結果:ドナーへの負荷により作成した肺水腫ドナー肺の摘出前P/F ratioは、従来群(N=3)306、EVLP群(N=2)205とドナー肺の負荷ダメージの程度には有意差は認めなかった。続いて行った肺水腫肺を用いた移植実験では、従来法群(N=3)では移植後P/F ratio = 142(30min), 60.3(1h), 71.5(1.5h)と不良であり、全例が2時間以内に死亡したのに対し、2時間のEVLP後に移植したEVLP群ではP/F ratio = 534(30min), 455(1h), 511(1h30min), 442(2h), 526(3h)と良好な結果であった。2群間解析(t検定)では、P=0.0015(1h30min), P=0.00020(2h), P=0.00013(3h)と有意差をもってEVLP群で予後良好であった。 本結果から、移植前急性期に生じたドナー肺水腫肺に対しては、移植前にEVLPを用いることでreconditioningが十分に期待でき、移植後の成績も移植直後から良好な結果が得られる可能性が示唆された。
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