研究課題
上皮成長因子受容体(EGFR)に遺伝子変異を有する非小細胞肺癌において、チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)に対する獲得耐性の克服が急務である。本研究の目的は、EGFR-TKI耐性肺癌細胞株を樹立し、EGFR-TKI耐性化後の肺癌に対する新しい治療法を開発することである。平成27年度は、(1)EGFR-TKI耐性株の樹立・維持、(2)EGFR-TKI耐性株の分子腫瘍学的考察を行った。まず、HCC827とHCC4006肺癌細胞株より、(a)MET増幅を伴う耐性株と、(b)癌幹細胞様の特徴を有する耐性株を樹立した。我々のグループは、MET増幅を伴う耐性株には新規HSP90阻害剤であるAUY-922と放射線の併用の有用性についてすでに報告している。本研究では、癌幹細胞様の特徴を有するHCC827、HCC4006のEGFR-TKI耐性株を分子腫瘍学的に調べたところ、薬剤耐性に関与するABCB1蛋白(薬剤排出トランスポーター)のmRNA発現がそれぞれ約1000倍、約10000倍以上に著しく増加していた。これらの耐性株でsiABCB1を用いてABCB1をノックダウンすると、ABCB1の発現は約1/10に低下し、siABCB1投与前は耐性であった化学療法剤(ドセタキセル)に対する感受性を回復させることができた。平成28年度は第3世代ABCB1阻害剤であるElacridaの有用性について、さらに検討を行い、論文発表を行った。最終年となる平成29年度は、引き続きEGFR-TKI耐性肺癌株においてNOTCH経路、wnt経路、Hedgehog経路、マイクロRNAなどに治療の標的になりうるものがないか解析を継続した。本研究では、EGFR-TKI耐性肺癌細胞株のうち、特に癌幹細胞様の特徴を持ったものに対する治療法の開発が第一目標であり、in vitroの段階では目標を達成できたと考える。
すべて 2017
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Oncology Letters
巻: 14(4) ページ: 4349-4354
10.3892/ol.2017.6678