研究実績の概要 |
代償性肺成長は片肺全摘後の残存肺に負荷される物理的緊張により誘発されることを証明するために下記の実験を行った。マウスを用いて全身麻酔下に開胸のみ(SHAM群)、左肺全摘のみ、左肺全摘及び胸腔内充填のいずれかを施行した。胸腔内充填は肺全摘による残存肺への緊張負荷を解除する目的で行った。 SHAM群と比べて、左肺全摘のみでは術後7日目の残存肺の湿重量(0.20 ± 0.04 g vs. 0.41 ± 0.06 g, P<0.001)、乾燥重量(94.3 ± 2.1 mg vs. 183.0 ± 2.0 mg, P<0.001)、肺容積 (0.25 ± 0.06 mL vs. 0.44 ± 0.04 mL, P<0.001) が有意に増加した。一方で、肺胞数(63.9 ± 12.8/field vs. 59.1 ± 10.7/field, P>0.1)、総肺胞面積 (2436 ± 213 μm2/field vs. 2341 ± 182 μm2/field, P>0.1)、平均肺胞面積40.0 ± 10.4 μm2 / alveolus vs. 41.3 ± 10.2 μm2/alveolus, P>0.1)は群間で差がなかった。充填術を行った左肺全摘群では、術後7日目の残存肺の湿重量 (0.23 ± 0.04 g)、乾燥重量 (103.5 ± 18.4 mg)、肺容積 (0.28 ± 0.03 mL) の増加は抑制された(いずれもSHAM群との間で有意差なし)。また、肺胞数 (59.7 ± 13.5/field)、総肺胞面積 (2479 ± 224 μm2/field)、平均肺胞面積 (43.7 ± 11.3 μm2/alveolus) はいずれの群間とも差がなかった。以上より、代償性肺成長は片肺全摘後に誘発されるが、残存肺に負荷される物理的緊張が大きな誘発因子であることが証明された。
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