研究課題/領域番号 |
15K10267
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
吉増 達也 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60316099)
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研究分担者 |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
佐藤 冬樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60400131)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | EDIL3 / 肺癌 / 遠隔転移 / 臓器特異性 / seed and soil theory |
研究実績の概要 |
ヒト肺腺癌培養細胞株A549,PC-9, VMRC-LCDを用いた.ヌードマウス (Balb/c-nu/nu) の肺,肝,腎,副腎,骨,骨格筋を約1 mm厚の組織片とし,これらの臓器上で各細胞株を7日間培養し割面上に生着して増殖し得た細胞を回収した.この操作を複数回施行し臓器上から回収した細胞株の遺伝子発現をマイクロアレイ で評価した.臓器上培養から得られた各細胞株の遺伝子発現について,肝から回収された細胞株の発現変動と他の5臓器から回収された細胞株の発現変動を比較し,t検定にて有意差(p<0.05)が認められ,かつoriginalに比し平均で1.5倍以上の変動が確認された遺伝子を肝転移の臓器特異性を決定する候補遺伝子として抽出した. 検討を行った28869遺伝子のうち肝組織において特異的増強を示したものが167遺伝子,特異的な減少を示したものが45遺伝子で,うち最も強い変動はEDIL3の増強であった.EDIL3は肝細胞癌において腫瘍の増殖・進展に関与することが知られている.そこで,遺伝子導入によりEDIL3を強制高発現させた安定細胞株PC-9/EDIL3を作成してヌードマウスに移植し,転移能をoriginalのPC-9と比較した.結果,心腔内投与及び皮下投与(n=16)では,どちらの細胞も肝転移の形成は確認できなかった.次に,肝への直接接種(n=24)を行ったところ,originalのPC-9では生着が見られなかったが,PC-9/EDIL3においては,接種後2 weekで4/6,4 weekで5/6において腫瘍の形成が確認された. 肺癌の肝転移形成過程において,EDIL3発現は癌細胞が肝実質へ到達した後の生存と増殖・進展に関与していると推測される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
動物実験における遠隔転移モデルの確立に予想以上の困難性があり、試行錯誤が必要であった.最終的には、本実験系における理論検証により相応しい局所接種モデルを採用することで、研究を進捗させることができた.
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今後の研究の推進方策 |
現在、次の候補遺伝子の導入は完了しているため、次回も局所接種モデルを用いて検討を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験モデルの確立が遅れたためである。現在、解決しており、このまま検討を進める。
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