研究課題/領域番号 |
15K10268
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
大橋 拓矢 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90644518)
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研究分担者 |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
吉増 達也 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60316099)
佐藤 冬樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60400131)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | hormesis / 抗癌剤 / HDRA / 肺癌 / 乳癌 |
研究実績の概要 |
抗癌剤は治療に際して最大投与量での投与が推奨されている.しかし,高齢者の多い肺癌患者においては止むなく減量が行われることが多い.抗癌剤のような増殖抑制効果のある薬剤では,低用量で投与した場合に逆に増殖促進効果を示すことがある.これをhormesis現象といい,薬理学的に一般な事象として知られているが,抗癌剤領域では詳細な検討が行われない.本研究では,各種抗癌剤のhormesis現象を定量化すると共に,hormesis現象におけるkey moleculeを同定することで,それを特異的に抑制して抗癌剤治療効果を増殖させるhormesis抑制療法の標的分子を定め,全く新しい癌治療のstrategyを提示する. A549肺癌細胞を用いて,CDDP,5-FU,DTX,PTX,VNR,GEMについてhormesisを考慮したdose-response curveの理論式を検証すると,良好に適合し,種類により差はあるものの,全てにおいてhormesis現象を確認した. hormesis現象の普遍性の確認目的で,続いて組織培養法抗癌剤感受性試験 (HDRA)を用いて,肺癌・転移性肺腫瘍 (原発:悪性黒色腫)・乳癌の手術検体で同様の検討を行い,hormesis現象を確認した.中でも症例数の多い乳癌手術検体22例について検討すると,9例でhormesis現象がみられた.HDRAにおけるPTXの適正接触濃度は25μg/mlであり,hormesis現象が見られた群はED50が25μg/mlより高濃度であり,また25μg/mlにおける細胞量がbaselineより高くなっている症例がみられた.実臨床においても一定の割合でhormesis現象が実際に起こっている可能性が示唆され,またPTXの非奏効例においては逆に増殖促進が生じている可能性があると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
hormesis現象の普遍性が確認でき,さらに組織培養法抗癌剤感受性試験 (HDRA)を用いて腫瘍組織で抗癌剤に対するhormesis現象の定量化とその特徴について検討できた. しかし,hormesis現象におけるkey moleculeの同定については遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
hormesis現象におけるkey moleculeを同定すると共に,論文化を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は腫瘍組織を用いたhormesis現象の普遍性の確認に時間を要した.次年度はhormesis現象におけるkey moleculeの同定を進める.
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