研究実績の概要 |
肺気腫は進行性の肺胞んの破壊をきたす疾患であり,現在のところ,根本的な治療法はなく,対症療法のみが行われている.肺気腫の再生を目指した薬物療法の臨床試験はこれまで全てがnegative studyであった.我々は,徐放性basic-FGF製剤を胸腔内に投与することで気腫肺において肺胞の再生が得られることを動物実験にて証明し,すでに報告した (Kawago M, Yoshimasu T, Tabata Y, Yamamoto M, Hirai Y, Kinoshita T, Okamura Y. Intrapleural administration of gelatin-embedded, sustained-release basic fibroblast growth factor for the regeneration of emphysematous lungs in rats. J Thorac Cardiovasc Surg. 2014 May;147(5):1644-9.).現在はこの結果に基づいて臨床試験を行っている, 肺気腫を伴う気胸では肺実質の高度な破壊のため瘻孔が閉鎖せず難治性となりやすい.本研究は,瘻孔閉鎖の促進と再発の予防を目的とし,徐放性basic-FGF製剤を胸腔ドレーンより投与して肺実質を再生させる第II相臨床試験である. 希釈フィブリン糊注入療法 (Chest 2000; 117:790-5) が施行される高度の肺気腫を伴う難治性気胸患者が対象で,これまでの登録例は14例,徐放化basic-FGF製剤を加えた希釈フィブリノーゲン液を胸腔ドレーンから注入し胸膜面全体に塗布した後,トロンビン液にて固着させた.全例で気瘻は停止し再発なく胸腔ドレーンが抜去された.重篤な副作用はなかった.肺実質再生の効果は胸部CTのlow attenuation areaの割合 (LAA%)にて評価した.LAA%は治療前46.8±20.9%に対し治療後32.3±20.5%と有意(p=0.0215)に低下し,肺胞再生の可能性が確認された.
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