研究課題/領域番号 |
15K10274
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
新明 卓夫 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30449392)
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研究分担者 |
桑名 健太 東京電機大学, 工学部, 助教 (00593055)
中村 治彦 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80183523)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 触覚センサ / 触覚鉗子 / 肺腫瘤 / 腫瘍モデル / 肺癌 / 胸腔鏡手術 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、肺での使用に向けたセンサ付鉗子のハードウェア開発およびセンサ付鉗子により計測される硬さ提示ソフトウェア実現に向けた把持対象の厚さ算出アルゴリズムの開発を行った。 ハードウェア開発にあたり、まず、ブタ肺の大きさとヤング率計測を行った。ブタ肺の胚葉数や大きさはヒトの肺とは異なるもののブタの肺葉の中でヒトの肺にもっとも大きさが近いブタ下葉を対象にハードウェア設計を行うこととした。ヤング率の計測結果を見ると、現在用いているMEMS 3軸触覚センサは、正常の肺の硬さを計測するのに十分なレンジを持つことが確認された。試作する鉗子の機構としては、体内で簡易的な圧縮試験を行うことを想定し、鉗子の2つの先端把持部が平行を維持したまま開閉動作を行うことが可能なスコットラッセル機構を採用し、動作確認用の試作を行った。次年度以降、硬さ計測性能の評価を行っていく予定である。 把持対象の厚さ算出アルゴリズムとしては、センサ付鉗子により計測される圧縮力の時系列データにおいて、把持対象を把持した瞬間に圧縮力が急激に増加することを利用し、圧縮力の時間変化から厚さを算出するアルゴリズムを構築した。 また、腫瘍モデルとしてのシリコーンゴム球を埋植したゼラチンを生体モデルとして、センサ付鉗子による硬い腫瘍モデルの検出可能性について検討した。生体モデルをセンサ付鉗子で把持したところ、腫瘍モデル近傍を把持した際に計測されるせん断力が大きくなった。腫瘍モデル直上を把持した際には、圧縮力が最大となると同時にせん断力の値が腫瘍モデル近傍を把持した際に比べ小さくなった。以上のことから、センサ付鉗子により対象を把持した際に計測される圧縮力とせん断力を複合的に利用することで、腫瘍モデルであるシリコーンゴムの大きさやセンサ付鉗子の把持位置に対する腫瘍モデルの存在する方向を推定できる可能性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤング率のリアルタイム提示ソフトウェアの開発については、厚さ計測アルゴリズムの構築にとどまったものの、肺を想定したセンサ付鉗子の設計試作については、当初の計画以上に進展している。また、シリコーンゴムを埋植したゼラチンを対象として、センサ付鉗子による腫瘍判別の可能性が確認された。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
肺内腫瘤が探知可能と考えられる性能が達成された時点で、学内倫理委員会の承認を得た上で、手術時のヒト摘出肺を用いて、実際の臓器において病巣部位同定が可能か否かの実験を行う予定である。この時、同時にリアルタイムで鉗子先端のセンサの情報を表示するソフトウェアと、その装置についても完成に向けて製作を継続する。鉗子の十分な性能が得られた時点で、臨床応用に向けて、実験動物(豚)を用いて、全身麻酔下で主として装置の安全性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況で、予定した装置作成は次年度になると見込まれたため、費用を翌年に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、装置作成とその検討作業にはいるため、繰り越した金額はすべて装置作成に使用される予定である。
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