研究実績の概要 |
平成29年度は前年度に設計した鉗子最大径10 mm以下としたセンサ付鉗子を試作した.また,センサ付鉗子で肺を把持した際の肺の損傷を評価するため,センサ付鉗子のエンドエフェクタモデルでブタ肺を圧縮した際の損傷の評価を行った. センサ付鉗子の試作については,まずは3Dプリンタによる試作により動作確認を行ったところ,駆動軸のぶれによる開閉動作の不具合等の課題が生じた.これら課題を改善した設計を行ったのち,金属鉗子にも用いられている材料を用いてセンサ付鉗子を試作した.試作したセンサ付鉗子において,閉じた状態の把持部が内径10 mmのパイプの内側を通過できることを確認した. 肺の損傷評価に関しては,センサ付鉗子のエンドエフェクタ部を模擬したモデルによりブタ肺に対して圧縮試験を行い,圧縮時の圧縮力が2, 4, 6 Nとなるよう圧縮した際の圧縮部の外観評価および組織学的評価を行った.外観の評価においては,すべての圧縮力で肺組織に把持面の圧縮痕を確認したものの,2, 4 Nの圧縮力では圧縮終了後1分未満で圧縮痕が緩和した.6 Nにおいては,圧縮痕は残留したものの肺胞膜の破壊はみられなかった.また,組織の切片をHE標本にし,顕微鏡観察により組織学的評価を行った結果,すべての圧縮力において組織の変化はみられなかった.これらの結果より,計測時の圧縮による対象の損傷は十分小さいことが確認された. 研究期間全体では,ヒト組織を対象とした評価にはいたらなかったものの,肺用に特化した胸腔鏡ポートから胸腔内に挿入可能なサイズのセンサ付鉗子の試作と,センサ付鉗子から得られたデータから硬さを算出し,硬さ情報を直感的に提示するシステムの開発を行った.今後はブタを対象とした評価,摘出したヒト組織を対象とした評価を実施し,実用化を目指す.
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