研究課題
国立がん研究センター中央病院にて手術切除された原発性肺腺がん症例のうち、およそ250例が多層的解析研究に組み込まれている。そのうち、術後再発が認められなかったのが約50例、術後脳転移と診断され手術切除されたのが16例(同一症例からの肺原発巣と脳転移巣のペア症例)、術後再発しプラチナダブレット治療を受けたのが約80例である。これらすべての症例のドライバー遺伝子変異情報と臨床病理学的因子、さらにRECIST に基づく治療効果判定がなされているかどうかを再確認し、臨床情報などをアップデートした。これらの情報を基に解析に用いる多層的解析データを抽出し、解析に適するかどうかを確認し、不適な症例を除いて解析に進むことにした。脳転移に関連する因子の解明は、同一症例における肺原発巣と脳転移巣での比較解析にておこない、また、肺原発巣にて脳転移に関する因子の解明は脳転移をきたした群と脳転移以外の転移をきたした群、もしくは転移をきたさなかった群において比較解析をおこなう。また、肺がんのドライバー遺伝子ごとに臨床情報学的因子が異なるかどうか、さらに、遺伝子変異を含む多層的解析にて相違が認められるかどうかを検討した。その結果、ドライバー遺伝子融合陽性肺がんではがん関連遺伝子やSWI/SNF遺伝子など全遺伝子変異数が少なく、一方ドライバー遺伝子陰性肺がんでは遺伝子変異の高度な蓄積が認められることが明らかとなった。このことは、ドライバー遺伝子融合が発がんに大きく関与し、その治療標的とすることの有用性を示している。
2: おおむね順調に進展している
解析に用いる症例の絞り込みと臨床病理学的情報の整理を終えた。また、転移再発や治療効果に関する因子の比較解析やさらなる検討に値する候補因子の選定を終えた。
脳転移や治療応答性のバイオマーカー候補とされた因子については、独立した群を用いての検証研究や、細胞実験での機能解析といった解析精度を上げての検証を行う予定である。上記にて確認された因子については、ドライバー変異に加えて、性別、年齢、喫煙歴、TNM stage、治療、RECIST 効果判定などと対比して、臨床病理学的因子との関連を明らかにする。
前年度までは、すでに実験済のデータを用いての解析であったためで、当初の予定通り物品費の多くは今年度以降におこなう独立した群での検証研究や細胞実験などに用いられる予定である。
独立した群での解析であれば、遺伝子変異をSanger シークエンスやDeep re-sequencing などにておこない検証し、mRNA やマイクロRNA 発現であれば、半定量的PCR(Taqman アッセイなど)法をおこなって、その発現量の測定をおこなう。さらに細胞実験などで同定された因子のさらなる機能的意義の解明をおこなう。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Cancer Research
巻: 75 ページ: 2264-71
10.1158/0008-5472
Journal of Thoracic Oncology
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http://www.nccri.ncc.go.jp/s010/010/010/20151209215834.html