研究課題
胸腔内に存在する癌細胞は、様々な経路で全身に移動し、それぞれ定着する。その場合胸膜に存在する乳斑(milky spot)と胸水のドレナージ孔(stomata)は重要な働きをしている。胸腔内に存在する癌細胞は、肺癌の場合、播種や手術中の散布などが問題になる。胸腔内では乳斑から遊走したマクロファージが、癌細胞の貪食に最もかかわってくる。マクロファージはヒトの場合、多くは骨髄で産生された単球が分化して形成されるが、癌細胞が存在することの認識が骨髄にどのような機構で伝わるか、不明である。Stomataからリンパ系に吸収された癌細胞は、その移動中にリンパ節でトラップされる。そこで定着して転移巣を形成する、形成しない、に関わらず、リンパ球は癌細胞の存在を認識して様々な伝達物質などを放出する。我々は呼吸器外科症例を検討し、いかなる実験系を確立するかに先ず取り組んだ。関係学会において発表し、同様の専門家と意見交換を行った。我々の学ぶべき症例では、70歳台の男性で、左肺癌(扁平上皮癌)で肺門リンパ節に転移がなく、気管分岐下に転移が陽性で、心膜播種が認められ、下葉切除術後化学療法後に、対側の縦隔リンパ節に転移が生じたものがある。この転移形成の機構が、まさに我々の追究しようとしているところである。研究では、TNFαなどのメディエータ―を実験動物に癌細胞とともに胸腔内に投与し、その結果、いかなる癌の進展がstomataから生じるか、PEConjugatedの抗体などを使用して検討した。有意な実験結果はまだ得られていないが、今後さらに実験の精度を高めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
1)各関係学会、研究会に参加し、積極的に意見交換を行った。2)特徴的な臨床例を詳細に検討し、いかなる実験系が適しているかを検討した。3)実際に、単球の分化が何によってコントロールされマクロファージへと誘導されるかを検討したが、癌細胞との関連性については、有意な結果は得られていない。
1)今後も各関係学会、研究会に参加し、専門分野を同じくする研究者と意見交換を行っていく。2)臨床例から得られるヒントを重要視し、実験手法や使用する試薬などを変更していく。3)乳斑に存在するマクロファージの由来と、遊走刺激について、癌細胞の存在がどのように関連しているかを検討していく。
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