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2015 年度 実施状況報告書

易破裂大型脳動脈瘤の新規動物モデルとヒト臨床標本による破裂防止薬剤治療法の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 15K10287
研究機関北海道大学

研究代表者

中山 若樹  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40421961)

研究分担者 森脇 拓也  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (30597464) [辞退]
穂刈 正昭  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (30622807)
鐙谷 武雄  北海道大学, 大学病院, 助教 (80270726)
数又 研  北海道大学, 大学病院, 講師 (60634144)
寳金 清博  北海道大学, 大学病院, 教授 (90229146)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード脳動脈瘤 / ラット / 動物モデル / くも膜下出血 / 脳動脈瘤破裂 / ニトロ化合物 / 高血圧 / 血行力学的負荷
研究実績の概要

脳動脈瘤の破裂機構を解明するための第1段階として、易破裂性大型脳動脈瘤の動物モデルを確率することを目指した。従来のラット脳動脈瘤モデルは、左総頸動脈結紮によって血行力学的な負荷を与え、両側腎動脈後枝の結紮と高塩分食により高血圧を誘導維持しつつ、ニトロ化合物を給餌に含有させて血管壁障害を惹起するものだが、誘導される動脈瘤はヒトで言えば初期病変にすぎないごく小さいものであり、破裂することはない。
そこで手術方法と高塩分食は同一条件のままで、ニトロ化合物の投与方法を、安定なフマル酸化合物に変更し、投与量が明確にコントロールできる腹腔内投与を1週間毎に行う方法を試行した。投与量と飼育期間でA群(n=31, 400mg/kg, 4w)、B群(n=31, 400mg/kg, 8w)、C群(n=27, 2800mg/kg, 8w)、D群(n=13, 2800mg/kg, 12w)へ分類し、血圧変化・死亡率・瘤誘導率・誘導部位を評価した。
いづれの群も高血圧が誘導された。High-doseのC・D群では単回投与/週では致死的であったが、半量を2連日投与/週により長期生存を得た。Low-doseのA群とB群の比較では死亡率(12.9%vs 16.1% p=0.719)や誘導率(19.4% vs 29% p=0.374)に有意差はなく、High-dose のC群とD群の比較でも死亡率(7.4% vs 30.1% p=0.053)や誘導率(66.7% vs 69.2% p=0.871)に有意差はみられなかった。しかし、同一飼育期間群の比較では、B群と比してC群で誘導率が有意に高く(66.7% vs 29% p=0.0042)、死亡率に有意な悪化は無かった(16.1% vs 7.4% p=0.309),そして、C群の22.2%に大型瘤を誘導することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

約70%近い高確率で動脈瘤を誘導することができ、そのうち2割以上が大型の嚢状動脈瘤であったことは、破裂を目指す脳動脈瘤の動物モデルとしては現時点でも相当に画期的な成果である。大型動脈瘤の発生率は、さらにもう少し上昇すると尚理想的ではあるが、すでに現状であっても、破裂前および破裂後の動脈瘤の病理組織評価や、破裂を抑止する効果を期待する薬剤投与実験に移行することが可能である。
本研究の中で最も難渋することが予想されたのは、この大型動脈瘤モデルの確率であったが、1年目でかなりの進捗が得られており、おおむね順調に進展しているものと判断する。ただし、今回行った実験群の飼育期間中には、実際の動脈瘤破裂は1例しか認められていない。今回行った動物モデルを飼育継続し、いかほどの確率で破裂現象が起きるかに応じて、今後の研究進捗はある程度左右されることは予想されるため、引き続き、より理想的なモデル作成方法は模索し続ける必要はある。

今後の研究の推進方策

本研究の最終段階は、易破裂・大型脳動脈瘤の動物モデルに対して、抗血小板剤などの薬剤投与実験を行い、破裂率に対する効果を調査することにある。しかしそれに先立って、大型瘤の誘導率をさらに向上させることと、動脈瘤が誘導された個体をaliveの状態で特定し、それを選択的に長期飼育できる体制を作る必要がある。
大型瘤誘導率のさらなる向上のために、メスのラットを用いて、前述の処置に加え、卵巣摘出も併せて施すことを計画している。これは、ヒトで有病率の高い閉経後の女性を反映させようとするものである。
動脈瘤誘導の有無をaliveで評価する方法としては、エコーのドップラーモードを活用することを計画している。あらかじめ頭蓋骨を一部削除しておくと、麻酔下で、脳底動脈・内頚動脈・中大脳動脈水平部・前大脳動脈近位部をそれぞれ同定することは可能なので、これを定期的に行うことで動脈瘤誘導を検出することができるものと期待している。
以上の手法を確立したところで、いよいよ薬剤投与実験に移行していく予定である。用いる薬剤としては、抗血小板剤、スタチン、血管内皮保護薬などを考えている。評価方法としては、破裂率を比較検討することはもちろんだが、破裂する前に病理標本として取得し、壁在もしくは壁内での血栓形成や炎症反応を免疫染色で評価し、内壁の構造すなわち内皮の有無および形体を走査電子顕微鏡的に評価することも併せて行っていく予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 脳動脈瘤の基礎研究の現状2016

    • 著者名/発表者名
      森脇拓也
    • 雑誌名

      脳神経外科速報

      巻: 26 ページ: 169-175

  • [学会発表] A Novel Cerebral Aneurysm Model in Rat with Intraperitoneal BetaAminoPropioNitrilFumarate (Oral Presentation)2016

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Shimoda, Takuya Moriwaki, Naoki Nakayama, Takeo Abumiya, Ken Kazumata, Hideo Shichinohe, Kiyohiro Houkin
    • 学会等名
      International Stroke Conference 2016
    • 発表場所
      Los Angeles, USA
    • 年月日
      2016-02-17 – 2016-02-19
    • 国際学会
  • [学会発表] 大型脳動脈瘤モデルラットの確立へむけて(一般口演)2015

    • 著者名/発表者名
      下田祐介 森脇拓也 中山若樹 栗栖宏多 穂刈正昭 七戸秀夫 鐙谷武雄 長内俊也 数又 研 寶金清博
    • 学会等名
      第74回 日本脳神経外科学会学術総会
    • 発表場所
      ロイトン札幌(北海道-札幌市)
    • 年月日
      2015-10-14 – 2015-10-16
  • [学会発表] Inside Intramural Thrombus Formation with Inflammatory Reactions is Relevant to the Rupture of Cerebral Aneurysms (Oral Presentation)2015

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Shimoda, Naoki NAKAYAMA, Takeo ABUMIYA, Masaaki HOKARI, Kota KURISU, Hideo SHICHINOHE, Ken KAZUMATA, Kiyohiro HOUKIN
    • 学会等名
      83rd AANS Annual Scientific Meeting
    • 発表場所
      Washington DC, USA
    • 年月日
      2015-05-02 – 2015-05-02
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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