今回の研究では、臨床用MRIを用いることにより、放射性同位元素・造影剤を使用しない脳循環代謝評価を行い、脳卒中発症危険因子予測、術後評価、転帰予測に寄与することおよび脳卒中に関与するバイオマーカ探索を目的とした。 3年目である平成29年度は主にMRAによる半定量的脳循環予備能予測に関しての検討を行った。MRI装置は1.5 Tesla MRI装置を使用した。さらに3.0Tesla装置で撮像した過去のデータも使用し解析した。対象症例は脳梗塞および頚動脈内膜剥離術を施行した症例とした。造影剤などを用いずに、非侵襲的に脳循環を測定する手法を応用した術前MRAでの側副血行評価と術後過灌流との関係を検討した研究においては、両者は相関しないことを見出した。一方、頭蓋外からの脳血流量測定が術後過灌流を最も正確に評価し得ることも確認した。また重症脳梗塞症例で、MRSによる脳温測定を臨床応用した結果、発症早期から経時的に脳温を測定することにより、発症1週間の時点での脳浮腫の出現を予測しうることを見出した。さらに脳卒中バイオマーカとしては酸化LDLに着目し、急性期及び慢性期に採血することによりその経時的変化を確認し、早期診断に応用可能であることを確認した。バイオマーカの探索では出血性脳卒中と虚血性脳卒中では異なる傾向がみられ、これを現在論文投稿中である。またある種のホスホカイネースが、脳卒中早期に血中に出現し、その値と1ヶ月後の機能的転機が相関することを見出した。
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