研究課題/領域番号 |
15K10292
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
好本 裕平 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50242061)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 未破裂脳動脈瘤 |
研究実績の概要 |
未破裂脳動脈瘤が発見される機会が増加しているが、その対応指針は施設によって大きく異なる。近年明らかになりつつある自然歴、すなわちその年間破裂率から未破裂瘤を有することのリスクを定量化することが可能となりつつあるが、患者がその深刻度をイメージすることは容易ではない。本研究では未破裂瘤関連の疫学データを様々な角度から定量化・グラフ化することで、そのリスクの直感的な把握を可能とすることを目的とする。 治療適応の判断にはそれぞれの患者そして動脈瘤のリスクを個別化することが大切である。近年の多施設共同研究により未破裂脳動脈瘤の破裂率は明らかなサイズ依存性があることが明らかとなった。大型瘤に関してはその破裂率は相当高いものの、バリエーションが大きいため、数学モデルを用いての解析には不向きと思われる。本研究では未破裂脳動脈瘤のなかでも大半を占める小型瘤に焦点をあてることとした。一般的に小型瘤とされる7mm未満の未破裂瘤に関しては年間破裂率0.5%程度と仮定して数学モデルを組み立て、その後の感受性試験でその信頼度を検証することは十分な合理性を有すると考える。 複雑に絡み合う様々な要素を判断分析に取り入れるには、マルコフモデルなどの数学モデルが最適であった。年齢と動脈瘤サイズが最も大きな因子となることは今までの多くの疫学データなどが明らかにしているところである。われわれが開発してきた脳動脈瘤の自然歴数学モデルを様々な疫学データに合致するように作成し、各患者の動脈瘤の深刻度を様々な形で可視化する。また、疾患ごとの将来の死亡確率を算出することで、未破裂脳動脈瘤の深刻度をわかりやすく数値化そしてグラフ化することを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに必要となる数学モデルはほぼ完成している。未破裂瘤の有無、そして後遺症の有無から健康状態を設定し、一定確率で健康状態間での移行が起こると仮定。多くの因子をまとめ、適切に仮定値を設定することで、疫学データに矛盾しない動脈瘤の自然歴モデルの作成が可能であった。また、モデル作成の基本となるのは各年齢の年間死亡率の数式化を行った。各年齢死亡率は本邦の公式統計サイトであるe-Stat(www.e-stat.go.jp)から取得。男女間の平均寿命には7年程度の開きがあるため、解析はすべて男女別に施行、年齢xでの死亡率p(x)は男性pmale (x) = 0.0000202・e0.0985x、女性pfemale (x) = 0.00000424・e0.111xと近似数式化が可能であった。各年齢の死亡率をマルコフモデルに投入し、未破裂瘤を有するそれぞれの患者にとっての生命予後、機能予後の損失を算出する検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は作成したモデルを元に種々の解析を行う予定である。一例として、年齢別、性別に小型未破裂瘤を有している場合の生存曲線への影響をグラフ化する。現在までに未破裂瘤治療に関する無作為化比較試験は存在しないが、数式モデルを用いた解析により仮想無作為化比較試験が可能となるはずである。すなわち予防的治療介入がこの曲線にどのような影響を与えるか明らかにできると考えている。更に、未破裂瘤が悪性新生物、心疾患、脳血管障害などの疾患別死亡比率に与える影響に関する検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費が予定を下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助などの人件費は実質的な解析などを行う次年度に増加する予定である。
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