今年度は、MHP1のマクロファージ、ミクログリアへの作用として、M1/M2についての解析を行った。MHP1が炎症抑制作用を有することから、マクロファージあるいはミクログリアをM0からM2に移行させる作用があることを想定し、M2のマーカーであるCD206の発現について、MG6細胞およびRAW264.7細胞をMHP1で刺激し、FACSと免疫染色にて解析を行ったが、明らかなCD206の発現の増加はなかったことから、M2への移行を促進させる作用はないことが明らかとなった。しかし、LPSで刺激したMG6細胞では、F4/80+CD206-細胞(M1)が増える一方でF4/80+CD206+細胞(M2)は低下するが、MHP1を加えた細胞では、M1細胞増加およびM2細胞低下が抑制されており、MHP1ではLPSによるM1シフトを抑制できることが明らかとなった。また、PI3K inhibitorであるLY294002を加えた検討では、MHP1による炎症性サイトカインの発現抑制効果が抑制されることが明らかとなり、MHP1によるTLR関連炎症の抑制効果がAkt/PI3K経路を介していることが示唆された。また、今後の臨床応用を考え、HPLC/MSを用いた血清中でのMHP1の安定性と分解産物を解析したところ、マウス血清中での半減期は約30分と、一般的な合成ペプチドよりも安定しており、また、分解産物も明らかにできた。分解産物のなかには、MHP1の活性中心部位を含むペプチドも多く含まれていたことから、血清中で分解されても、ある程度の活性は期待できることが明らかとなった。
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