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2016 年度 実施状況報告書

虚血および再灌流時の脳組織代謝変化のオミクスによる包括的解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K10302
研究機関神戸大学

研究代表者

細田 弘吉  神戸大学, 医学研究科, 准教授 (90403261)

研究分担者 篠山 隆司  神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10379399)
甲村 英二  神戸大学, 医学研究科, 教授 (30225388)
篠原 正和  神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80437483)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード脳虚血 / 脳代謝 / オミクス / ペントースリン酸経路 / 熱ショックタンパク
研究実績の概要

ラット中大脳動脈閉塞後(再灌流はなし)の脳虚血組織をガスクロマト質量分析装置(GC-MS)を用いて,網羅的に分析しメタボローム解析を行った.この結果を多変量解析により分析すると,主成分分析のscoreplotやHeatmapで虚血群と対照群(非虚血群) が綺麗に分離された.脳虚血特異的に変化する代謝経路を探索したところ,ペントースリン酸経路の亢進,ケトン体(hydroxybutyrate)の増加,GABAの増加などが示唆された.また,マイクロアレイ解析を行ったところ,脳虚血2時間後にToll様受容体シグナル経路とmitogen-activated protein kinase(MAPK)シグナル経路が有意に亢進していることが判明した.MAPKシグナル経路の中でも,heat shock protein 27 (HSP27)の発現増加が注目された.何故なら,HSP27はペントースリン酸経路の律速酵素であるglucose 6-phosphate dehydrogenase (G6PD) の活性を亢進するからである.G6PDはNADPHを産生して還元型グルタチオンの再生産を促進,抗酸化状態を維持するのに貢献する.RT-PCRやImmunoblotにより虚血時にG6PDのmRNA量やタンパク量は変化しないが,リン酸化HSP27 (pHSP27)は脳虚血後1時間で増加すること,G6PDの酵素活性は虚血2時間後に上昇すること,NADPH/NADP比も虚血2時間後に上昇することを確認した.さらに,虚血時のHSP27のリン酸化とそれに伴うG6PDの活性化はataxia telangiectasia mutated(ATM)kinaseの阻害薬(KU-55933)の脳室内注入により阻害されることを見出した.
以上より,再灌流を伴わない虚血早期においてATM kinaseが関与するHSP27リン酸化を介してのG6PD活性化がNADPHを増加させ、虚血早期の内因性抗酸化機構として働いている可能性が示唆された.これらの結果をまとめ,論文として報告した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上述のごとく,オミクス解析により,脳虚血の際に特異的に変化するいくつかの代謝経路を見出すことが出来た.さらに,ペントースリン酸経路にかんしては,律速酵素であるglucose 6-phosphate dehydrogenase (G6PD)がリン酸化されたHSP27により活性化されることを強く示唆する所見を得た.しかも,このHSP27のリン酸化はATM kinaseが関与していることまで解明できた.前年度より若干遅れていた再灌流実験にも力を入れて行った.その結果,再灌流の際にも上述のHSP27のリン酸化亢進,G6PDの活性増加,NADPH/NADP ratioの上昇などが起こることが判明した.これらの所見を確認し,さらに,ATM kinaseの佐賀医薬を投与するとどうなるかを確認しつつある.

今後の研究の推進方策

虚血時にATM kinaseが亢進しHSP27のリン酸化を介してペンントースリン酸経路のG6PDの活性が上昇してNADPH/NADO ratioが上昇して内因性虚血保護機構として働くという仮説を検証するために,阻害薬(ATMの阻害薬 KU-55933)投与下における虚血再灌流時の脳梗塞のサイズの変化を検証する.また,HSP27を誘導するgeranylgeranylac etone,celastrol, FLZ,carbenoxoloneなどの薬剤の投与下での脳虚血再灌流時の代謝変化や梗塞サイズの変化,機能予後に対する影響を調べる.これにより,脳梗塞治療の新たなターゲットを基礎づける.

次年度使用額が生じた理由

消耗品などの費用が当初の予定より若干安価であったために,僅かな金額ではあるが,残額が生じてしまった.

次年度使用額の使用計画

次年度の本来の予算と合わせて消耗品などに使用する予定である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Combined metabolic and transcriptional profiling identifies pentose phosphate pathway activation by HSP27 phosphorylation during cerebral ischemia2017

    • 著者名/発表者名
      Imahori Taichiro、Hosoda Kohkichi、Nakai Tomoaki、Yamamoto Yusuke、Irino Yasuhiro、Shinohara Masakazu、Sato Naoko、Sasayama Takashi、Tanaka Kazuhiro、Nagashima Hiroaki、Kohta Masaaki、Kohmura Eiji
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 349 ページ: 1~16

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.neuroscience.2017.02.036

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Combined Metabolic And Transcriptional Profiling Identifies Pentose Phosphate Pathway Activation by Heat Shock Protein 27 Phosphorylation During Cerebral Ischemia2017

    • 著者名/発表者名
      YUSUKE YAMAMOTO, Kohkichi Hosoda, Jun Tanaka, Taichiro Imahori, Tomoaki Nakai, Yasuhiro Irino, Masakazu Shinohara, Naoko Sato, Eiji Kohmura
    • 学会等名
      International Stroke Conference 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] 脳組織のオミクス解析による 脳虚血中HSP27リン酸化を介する ペントースリン酸経路活性化の同定2016

    • 著者名/発表者名
      山本祐輔、細田弘吉、入野康宏、篠原正和、今堀太一郎、 田中潤、中井友昭、甲村英二
    • 学会等名
      第59回日本脳循環代謝学会学術集会
    • 発表場所
      徳島
    • 年月日
      2016-11-11 – 2016-11-12
  • [学会発表] 虚血脳組織のオミクス解析による 脳虚血中HSP27リン酸化を介する ペントースリン酸経路活性化の同定2016

    • 著者名/発表者名
      山本祐輔、細田弘吉、入野康宏、篠原正和、今堀太一郎、 田中潤、中井友昭、甲村英二
    • 学会等名
      日本脳神経外科学会第 75 回学術総会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2016-09-29 – 2016-10-01

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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