研究実績の概要 |
原発性脳腫瘍の約30%を占めるグリオーマの予後は極めて不良であり、手術療法、化学療法、放射線療法を併用しても平均生存期間は約1年である。最近、日本のグリオーマ治療において使用が開始された抗VEGF抗体bevacizumabは、世界規模の臨床試験において、無増悪生存期間は延長したが全生存期間では有意な延長効果は認められなかった。インテグリンのリガンドであるCYR61 (cysteine-rich protein 61)は脳腫瘍の血管新生や増殖に関連しているとされ、脳腫瘍の悪性度に関与しているといわれている。 今回我々はbevacizumab 投与下におけるグリオーマ細胞、症例を対象にCYR61の発現解析を行い、CYR61の発現とbevacizumabの治療抵抗性について検討を行った。CYR61プラスミド, shRNA、CYR61抗体、CYR61蛋白、bevacizumabなどに関して本研究のセットアップを行った。CYR61の発現について、グリオーマ患者の予後における、陰性因子としてのマーカーと考えられており、当施設においても同様な結果が得られた。グリオーマ細胞株を用いて、分泌蛋白CYR61 の発現におけるbevacizumab 治療の反応性を調べた。Bevacizumab治療患者における分泌蛋白CYR61と、MGMT、IDH1などとの予後との関連性を調べた。 グリオーマ細胞株を用いて、分泌蛋白CYR61 の発現におけるbevacizumab 治療の反応性を調べた。患者サンプルから樹立した腫瘍細胞であるhuman glioma derived cellsを用いて分泌蛋白CYR61の発現を調べた。In vitroにおいて、CYR61を遺伝子導入により強発現または抑制することで、bevacizumab処理時に、グリオーマ細胞株、human glioma derived cellsに対してどのような影響があたえられるかについて検討した。また、CYR61とgermline variantについての検討を行いPIK3R1のgermline mutation がCYR61と予後とに相関することがわかった。統計学的データ解析を行い、学会発表・論文投稿した。
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