研究実績の概要 |
本研究は、体外高周波振動装置を用い、遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(recombinant tissue plasminogen activator: rt-PA)静注療法による血栓融解を安全かつ簡便に誘導し、再開通率を向上させるための臨床応用を目指した基礎的実験である。脳梗塞超急性期のrt-PA静注療法は、閉塞血管の早期再開通させる脳梗塞の特効薬として臨床導入されたが、特に重症となる脳主幹動脈の塞栓性閉塞では、その早期再開通率は低い。本研究は、rt-PA投与下のヘリコプター搬送時に、血栓溶解による再開通率が高いことに着目した実験であるため、ヘリコプター搬送時の振動条件を振動レベル計により、周波数と振動強度を調べた。ヘリコプター内の振動周波数は1~80Hzのなかでは、離着陸時に10~20Hzにピークのある特徴があり、飛行中は20~50Hzと50~80Hzにピークがあった。それをもとにin vitroで全血クロットを用いて、rt-PA存在下の振動刺激により、血栓溶解増強をもたらす至適振動数、振動強度を検討した。血栓溶解は振動強度と振動周波数に相関し促進された。これらの実験結果から、至適振動条件は30~50Hz, 50~100dBと考えられた。この振動条件を発生する体外振動装置を作成した。振動発生装置は、マッサージクッションのモーター部分を至適振動を得られるモーターに替え使用した。体外振動装置で発生される振動は、振動レベル計により調整、確認した。 臨床実験までには至っていないが、体外振動装置は安全基準(JIS規格)内であるため、臨床応用可能な装置となった。重症脳梗塞に対するrt-PA療法の血栓溶解作用増強は、今後、一つの治療法として確立するものと考えている。
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