研究課題/領域番号 |
15K10305
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
里見 淳一郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 准教授 (10304510)
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研究分担者 |
永田 俊彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (10127847)
多田 恵曜 徳島大学, 大学病院, 助教 (30547964)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳・神経 / くも膜下出血 / エストロゲン / 高塩分摂取 / 高血圧 |
研究実績の概要 |
脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血をきたす。日本は欧米諸国に比べ罹患率が高く、現在の医療水準においても社会復帰率が50%に満たない重篤な疾病である。我々は閉経期の女性に発生頻度が高いという疫学的事実に基づき、卵巣摘出を行った独自の脳動脈瘤モデルを確立した(J Neurosurg 2005)。さらに、ヒトの破裂部位と類似した脳動脈瘤破裂にはMMP-9増加による細胞外マトリックス崩壊が重要であることも新たに見出した(図1)。これらの研究は世界的に例がなく、独創性が高いと評価され、一連の研究においていくつかの受賞をしている。臨床的には脳動脈瘤破裂症例の血管壁の58%に歯周病菌のDNAが存在することがフィンランドから報告され、破裂脳動脈瘤壁の定量PCRによるDNA解析ではStreptocuccus mitis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Fusobacterium Nucleatum, Treponema denticola, Porphyromanas gingivalisなどの歯周病関連細菌DNAが検出されている(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2013)。さらに脳動脈瘤壁ではリコシル-ホスファチジルイノシトール結合型 単鎖膜糖タンパクであるCD14とtoll like receptor 2の複合体の高い発現が認められている。CD14はリポ多糖類(LPS)とLPS結合タンパク(LBP)の複合体の高親和性レセプタとして機能することから、我々の脳動脈瘤モデルをさらに改良し、歯周病菌由来LPSを投与すると脳動脈瘤の破裂率が上昇することを認めた(図2)。脳動脈瘤を原因とするクモ膜下出血の年齢を標準化した発生頻度には明確な国別地域格差が存在し、フィンランドや日本では年間人口10万人あたり約20人で、最も少ない中東地域では年間10万人あたり1.04人であることから、歯周病菌と脳動脈瘤の関係を本邦でも明らかにする必要があると考えた。歯周疾患は、血管内皮障害に関与していると考えられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周病重症度と動脈瘤破裂の関連が実証された。そのメカニズムにMMP-9上昇が関連することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
歯周病による血中MMP-9の上昇と破裂の関連性から、その上昇機序を解明し、薬物により、制御可能かどうかについて検討する。 現時点での国際学会での発表や英文雑誌への投稿・掲載に向けて進める。
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