研究実績の概要 |
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、現在の医療水準においても社会復帰率が50%に満たない重篤な疾病である。我々は閉経期の女性に発生頻度が高いという疫学的事実に基づき、卵巣摘出によりエストロゲン欠乏状態を誘導した独自の脳動脈瘤破裂モデルを確立し、脳動脈瘤破裂はMMP-9増加による細胞外マトリックス崩壊が重要であることも見出した。一方、他の研究グループにおいて、ヒト脳動脈瘤破裂症例の血管壁の58%に歯周病菌のDNAが存在することが報告され、破裂脳動脈瘤壁ではStreptocuccus mitis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Fusobacterium Nucleatum, Treponema denticola, Porphyromanas gingivalisなどの歯周病関連細菌のDNAが検出されている。我々の脳動脈瘤モデルにおいて、歯周病菌由来LPSを投与すると脳動脈瘤の破裂率が上昇することを確認している。そこで、臨床において歯周病がどのように脳動脈瘤に及ぼすかを検討するために本研究を行うこととした。これまでに歯周病の重症度が動脈瘤破裂に影響することを見出した。無歯を含む歯周病重症例では菌の血中抗体価および歯周プラーク中の歯周菌の含量の有意な増加が認められた。現在これらの臨床知見をまとめて論文作成中である。基礎研究においてはPorphyromanas gingivalis(Pg)由来のLPSを投与した群では破裂しやすい部位での破裂頻度が増加していることを見出し、PgLPSが直接脳動脈瘤破裂を誘導するかどうか、そのメカニズムについて現在検討中である。
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