研究課題
脳梗塞発症後の治療に関し、t-PAに対しラジカルスカベンジャーのエダラボンとの併用がtPAによる出血作用を抑制することやそのメカニズムを明らかにしているが、t-PAによる恩恵を受けられる症例は10%未満であり、脳梗塞発症後の有効な治療法の開発が期待されている。近年、脳梗塞後の炎症や免疫作用に着目した研究が増加しているが、マクロファージの役割についての詳細な検討は十分なされていない。マクロファージは主にM1様マクロファージ、M2様マクロファージの2種類のタイプに分けられる。M1様マクロファージはIFN-γやTNF-αなどを産生し、細菌や腫瘍細胞に対する殺細胞作用や炎症性作用を示す。これに対し、M2様マクロファージはIL-10やTGF-βなどを産生し、M1様マクロファージのような細胞傷害機能は持たず、細胞増殖や血管新生促進因子を発現することで、虚血後の脳損傷部位で神経再生に働く可能性が考えられている。またM2様マクロファージは免疫抑制作用を示す。このようにマクロファージは賦活化されるタイプによって作用が異なる可能性があるため、マクロファージの脳虚血後の作用をよりわかりやすくするためにマクロファージ賦活作用のあるGcMAFを用いてその影響や分子機構について検討した。血清糖タンパクであるGc proteinは炎症によって誘導されるβ-galactosidaseやsialidaseといった酵素によりGcMAFに変化する。このGcMAFによりマクロファージは強力に活性化されると報告されているが、脳虚血におけるGcMAFによるマクロファージ賦活化の影響はこれまでに検討されていない。本年度の研究から虚血の後期におけるGcMAFによる治療は脳梗塞部位のclearanceやM2様マクロファージの発現を増加させることや、M2様マクロファージの発現増加が神経再生と関連することを明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
M1/M2マクロファージの役割が脳梗塞後の時期によって異なることが判明した。脳梗塞における急性期の炎症にはM1が関与しており、また亜急性期においてはM2が神経再生に関与することが分かった。
脳梗塞後期にM2マクロファージを賦活する意義を明らかにすると共に急性期にM1マクロファージを制御する方策について検討する。M1マクロファージの発現が高く、脳梗塞が拡大する急性期に抗炎症作用物質を前投与し、GcMAFと併用した場合の影響を評価する。
必要となる物品の使用が次年度となった。
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