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2015 年度 実施状況報告書

ミクログリア活性化因子としてのキレータブル亜鉛の役割―脳卒中後遺症の克服―

研究課題

研究課題/領域番号 15K10307
研究機関高知大学

研究代表者

東 洋一郎  高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (80380062)

研究分担者 上羽 哲也  高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00314203)
齊藤 源顕  高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60273893)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード亜鉛 / ミクログリア / 脳卒中後遺症 / 炎症性サイトカイン
研究実績の概要

[具体的な内容]
本年度の研究により、1. 高濃度のキレータブル亜鉛を前処理したミクログリアはリポ多糖による炎症性サイトカイン産生が抑制された。2. 低濃度のキレータブル亜鉛を前処理したミクログリアは、リポ多糖暴露による炎症性サイトカイン産生が促進された。3. 低濃度キレータブル亜鉛による炎症性サイトカイン産生促進効果は細胞膜透過性亜鉛キレート剤ならびにP2X7受容体拮抗薬、活性酸素除去剤により阻害された。
[意義、重要性]
脳卒中は、高次脳機能障害など深刻な後遺症が残る場合が多く重大な問題となっている。このような後遺症の発症には、炎症反応などミクログリアの脳傷害性機能が大きく関与している。本年度までの検討により、内在性ミクログリア活性化因子「キレータブル亜鉛」がリポ多糖暴露によるミクログリアの炎症性サイトカイン産生に対して高濃度では抗炎症的な作用を示し、低濃度では炎症性サイトカイン産生を促進する作用を有していることを見出した。さらに低濃度キレータブル亜鉛による炎症性サイトカイン産生促進効果はミクログリアのキレータブル亜鉛取り込みとそれに続くP2X7受容体の活性化および活性酸素産生が関与することも見出した。以上の結果は、キレータブル亜鉛がその濃度によりミクログリアの神経傷害性機能に対して2方向性の作用を有することを示しており、さらに低濃度キレータブル亜鉛による炎症促進効果の分子機序も解明したことから、これを利用した治療法開発に繋がる意義深い重要な知見である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の検討により、当初予備検討で観察されていた高濃度キレータブル亜鉛の抗炎症作用が低濃度キレータブル亜鉛では炎症促進作用を示すことが明らかになった。当該研究の最終的な目的はキレータブル亜鉛に着目しながらミクログリアの機能を制御し、脳卒中後遺症を予防または克服する方法を開発することである。この点において高濃度キレータブル亜鉛はそれ自身が神経毒性を有することが知られているため、低濃度で惹起される炎症促進効果を詳細に検討することで最終目的の達成を目指すことにした。本年度は低濃度キレータブル亜鉛による炎症促進効果の分子機序を解明することができたため、おおむね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

本年度の検討により、低濃度キレータブル亜鉛がミクログリアに対する炎症促進効果を示すことを明らかにし、さらにその分子機序を解明することができた。
そこで今後の推進方策は以下の通りとする。
1. 脳卒中モデルマウスを作成し、キレータブル亜鉛の炎症促進効果の再検証。2. 脳卒中モデル処置により惹起される炎症性サイトカイン産生ならびに認知機能障害が亜鉛キレート剤によって阻害されるか否かの検討。3. 脳卒中モデルマウスを用いて認知機能障害を予防または克服するために有用な標的分子の探索。4. ミクログリアの神経保護性機能誘導に対するキレータブル亜鉛の効果の検討。

次年度使用額が生じた理由

申請時は、予備検討により明らかになっていた高濃度キレータブル亜鉛の抗炎症性作用を検討するため、初代培養ミクログリア並びに初代培養神経細胞を作成し、多くの抗体および試薬を購入する予定であった。しかし、本年度の検討から低濃度キレータブル亜鉛に炎症性サイトカイン産生促進効果が存在することを見出すことができた。この炎症性サイトカイン産生促進作用は本研究計画の最終目的である「ミクログリアの機能を制御し、脳卒中後遺症を予防または克服する方法の開発」に大変重要であることから、本年度は低濃度キレータブル亜鉛の作用機序の解明に焦点を絞って検討した。そのため、予定していた初代培養神経細胞の作成並びに、多くの抗体および試薬を購入する必要がなくなり当該助成金が生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度は脳卒中モデルマウスを作成してキレータブル亜鉛の炎症性サイトカイン産生促進効果を確認し、さらに脳卒中後遺症の発症にキレータブル亜鉛が関与しているか否かを多くの種類の行動解析を行う予定である。行動解析による検討には多くのマウスを用いた再現性の確認が必須である。さらに本年度遂行できなかったキレータブル亜鉛刺激後のミクログリアによる神経細胞への効果も検討する予定である。本年度生じた当該助成金はこれらの検討に使用する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 脳内亜鉛によるミクログリアの機能制御2016

    • 著者名/発表者名
      東洋一郎,齊藤源顕
    • 学会等名
      日本薬学会第136年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2016-03-26 – 2016-03-29
  • [学会発表] 亜鉛はミクログリアの活性化を制御する2016

    • 著者名/発表者名
      東洋一郎, 新武享朗, 清水翔吾, 清水孝洋, 中村久美子, 山本雅樹, 齊藤源顕
    • 学会等名
      第89回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2016-03-09 – 2016-03-11
  • [学会発表] 脳虚血後のミクログリアを介した炎症反応に対するキレータブル亜鉛の効果についての解析2015

    • 著者名/発表者名
      東洋一郎, 新武享朗, 清水翔吾, 清水孝洋, 中村久美子, 齊藤源顕
    • 学会等名
      第68回日本薬理学会西南部会
    • 発表場所
      海峡メッセ下関 (山口)
    • 年月日
      2015-11-21 – 2015-11-21
  • [学会発表] The role of brain zinc in microglial activation.2015

    • 著者名/発表者名
      Higashi Y, Saito M
    • 学会等名
      ISTERH2015
    • 発表場所
      Sheraton Dubrovnik Riviera Hotel ,Dubrovnik , Croatia
    • 年月日
      2015-10-18 – 2015-10-22
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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