研究課題
[具体的な内容]昨年度までの研究により、1. 培養ミクログリアにIL-4を添加することでM2ミクログリアを誘導したところ、添加1時間後からarginase-1の発現誘導が惹起され、この増加は添加6時間後まで時間依存的に増加し続け、その後は増加レベルが維持された。2. IL-4添加6時間後にミクログリア細胞内のキレータブル亜鉛量の増加が惹起され、この増加は細胞内亜鉛キレート薬(TPEN)の前処置により抑制されたが、細胞外亜鉛キレート薬(CaEDTA)の前処置では抑制されなかった。3. 培養ミクログリアにTPENを前処置しIL-4を添加したところ、arginase-1の発現誘導が促進された。しかしCaEDTA前処置ではこの効果は惹起されなかった。4. IL-4はM2ミクログリアの機能の一つである貪食活性を誘導するが、TPEN前処置はこれを抑制した。この時、arginase-1の基質であるl-arginineを添加しておくと貪食活性の抑制は阻止された。[意義、重要性]キレータブル亜鉛は、脳神経系細胞内の濃度を変化させ遺伝子発現などを制御している。ミクログリアは活性化すると神経傷害性のM1型または神経保護性のM2型のいずれかに誘導される。Arginase-1はIL-4によって誘導されるM2型ミクログリアが産生し抗炎症作用を示す。しかし、arginase-1の過剰発現はアルツハイマー病のアミロイド沈着など脳疾患の病態形成に関与している。昨年度までの研究成果は、IL-4が細胞内キレータブル亜鉛量の増加を惹起することを示しており、この応答はarginase-1発現を負に制御しM2型ミクログリアの貪食活性を維持するのに重要な役割を担っていることを示唆する世界で初めての知見であり、これらは脳卒中後遺症に対する新しい治療法の開発において重要な基礎資料となる意義深い知見である。
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