研究実績の概要 |
脳虚血における歯髄幹細胞(DPSC)移植の治療効果として,抗炎症作用による神経保護作用が示唆されている.我々は,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて肝細胞増殖因子(HGF)を強発現させたDPSCの移植により,急性期脳梗塞における治療効果の増強が得られるか検討した. ヒトHGFをクローニングした1型AAVベクターを構築後,DPSCに感染させHGF強発現DPSC(DPSC/HGF)を作成した. 一過性局所脳虚血モデルを用い, ラット中大脳動脈を90分閉塞後に再灌流させた. 治療群は, 対照群, DPSC単独群, DPSC/HGF群の3群(各 n=8)に分け, DPSC単独群およびDPSC/HGF群では再灌流直後に細胞100万個を, 対照群にはPBSを尾静脈より投与した. 再灌流24時間後に神経学的評価後断頭し, TTC染色および免疫組織学的検討を行った.神経細胞死の評価にはFluoro-Jade C(FJC)法を用いた. 患側半球脳でのHGF,IL-1β量はELISA法にて評価した. 虚血再灌流24時間後において, DPSC/HGF群(110.2±34.7mm3)は, 対照群およびDPSC単独群に比し有意な梗塞体積の縮小(p <0.01,p <0.05)を認めた. 皮質梗塞境界領域におけるIba1, TNF-α発現はDPSC/HGF群では対照群およびDPSC単独群に比ベて有意に抑制(p <0.01,p <0.01)され, FJC陽性神経細胞も有意な減少(p <0.01,p <0.01)を認めた. また, 脳内IL-1β量もDPSC/HGF群において対照群・DPSC群に比し有意に低下していた( p <0.01,p <0.05). HGF発現が強化されたDPSC移植では, 急性期虚血傷害後の虚血脳組織における炎症抑制効果の増強が得られ, それらが神経保護効果に寄与した可能性が示唆された.
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