研究実績の概要 |
脳幹内ならびに脳槽内における顔面神経軸索損傷・逆行性変性ラットモデルを作成し、軸索損傷後の顔面神経核の逆行性神経細胞変性のメカニズムと種々の因子による変成抑制効果を解析した。これまでに、脳幹内損傷モデルでの脳幹内への末梢神経移植により顔面神経核神経細胞の脱落を約20%抑制すること、エリスロポイエチンは造血因子であるのみでなくNO抑制作用も併せ持ち、顔面神経核の逆行性神経脱落を抑制し、これに顔面神経核におけるNADPH の発現が相関する可能性があること、matrix metalloproteinases(MMP)群は、発生段階の細胞の遊走・移動のみでなく、炎症、組織修復を調節するMMP 群、特にMMP-9 が本損傷後早期の白血球やマクロファージなどの炎症性細胞の遊走に関与すること、Ca2+チャネルブロッカー(Pregabalin: α2δリガンド)の投与により、脳槽内顔面神経損傷モデルにおいて脳幹内顔面神経核細胞の生存がDay 14, Day28ともに優位に維持され、活性型マイクログリアはDay3ならびにDay8で抑制されること(Moriya-S et al, J Neurosurg. Sci, 2017)を確認した。今年度はさらに免疫抑制剤であるFK506 (1mg/kg/day)を損傷後7 日間連続皮下投与し、同一個体健常側に対する損傷側の顔面神経細胞数比を比較したところ、day14、day28ともに非投与群に比べ投与群では優位に細胞比が高い (p<0.05)ことから、脳槽内損傷による顔面神経細胞の逆行性変性をFK506 が軽減させる作用を有することがわかった。現在、作用機序の詳細に関し、アポトーシス関連因子、マクロファージ、マクログリアの免疫染色を実施し、そのメカニズムを解析中である。
|