研究課題/領域番号 |
15K10324
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
高橋 寿明 北陸大学, 薬学部, 教授 (20363228)
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研究分担者 |
田中 潤也 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (70217040)
竹内 文也 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30281835)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グリオーマ / 薬剤耐性 / Oct-3/4 / MGMT / テモゾロミド / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
近年の医療技術の著しい進歩にも関わらず、浸潤性に発育する悪性グリオーマの治療成績は抜本的改善に至っていない。我々はこれまでにiPS細胞作製に必須の山中因子の一つであるOct-3/4がグリオーマの予後不良に正の相関を示すことを見いだしてきた。平成28年度はグリオーマ治療の第一選択薬として使用されているテモゾロミド(TMZ)の作用に対するOct-3/4の影響とOct-3/4の阻害剤スクリーニングに用いるnanogプロモーター下でGFPを発現するグリオーマ細胞の樹立を目指した。 Oct-3/4過剰発現ヒト膠芽腫細胞株(U251)(U251/ Oct-3/4)はコントロール細胞(U251/GFP)に比べて強いTMZ耐性を示した。この耐性作用は薬剤排出を担うABC transporterの阻害剤では抑制しきれないことから、別の作用機序が想定された。そこでTMZの効果を左右するメチル化DNA修復酵素(MGMT)の発現を調べたところ、U251/ Oct-3/4ではMGMT mRNAの発現が亢進し、MGMT遺伝子の転写調節領域内CpGのメチル化が抑制されていることが明らかとなった。さらにOct-3/4の発現を調節できるTetオフ細胞でMGMT遺伝子のメチル化状態を調べたところ、Oct-3/4の発現抑制期間に依存し、メチル化が亢進することも明らかとなった。以上の結果より、Oct-3/4はMGMT遺伝子の発現をエピジェネティックに制御することでTMZ耐性能を獲得していることが示唆され、Oct-3/4の発現抑制が膠芽腫の治療効果改善につながると考えられた。 すでにOct-3/4の発現を抑制する化合物同定アッセイに用いるnanogプロモーター下でGFPを発現するグリオーマ細胞を樹立しており、現在得られているクローンがOct-3/4遺伝子を過剰発現させた細胞株と同様の性質を有しているか検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はグリオーマ治療の第一選択薬として使用されているテモゾロミド(TMZ)の作用に対するOct-3/4の影響とOct-3/4の阻害剤スクリーニングに用いるnanogプロモーター下でGFPを発現するグリオーマ細胞の樹立を目指した。Oct-3/4がテモゾロミドの効果を左右するDNAメチル化酵素MGMTの遺伝子発現をエピジェネティックに制御することで抗がん作用耐性に関与している機序を明らかにできたことで、Oct-3/4の阻害剤を既存の膠芽腫治療に併用することで治療効果改善につながることを強く支持する結果である。またOct-3/4阻害剤開発に用いるOct-3/4プロモーター下でGFPを発現するグリオーマ細胞も樹立できた点で順調に研究が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)現在得られているOct-3/4プロモーター下GFPを発現するグリオーマ細胞の細胞生物的解析を行い、Oct-3/4遺伝子を過剰発現させた細胞株と同様の性質を有しているか検討し、Oct-3/4阻害剤開発に用いる細胞株を決定する。(2)3000種類以上の化合物ライブラリーを順次、細胞に添加し、GFPの蛍光強度変化を指標に、化合物のスクリーニングを始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
「その他」で計上していた機器使用料ならびに論文校正費がかからなかったのと、出張旅費の計上と支出に差額が出たため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は翌年度分の物品費として使用する。
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