研究課題/領域番号 |
15K10328
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 実 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (50332581)
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研究分担者 |
稲生 靖 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50372371)
藤堂 具紀 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80272566)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウイルス療法 / がん治療ウイルス / HSV-1 / G47Δ / 抗腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
世界初の第3世代がん治療用HSV-1であるG47Δの臨床試験から得られたデータをもとに、共分散構造分析などの工学的手法を用いてサイトカイン相互作用ネットワークを検討し、G47Δの抗腫瘍免疫を更に増強する新たな治療法の開発を目指している。G47Δの臨床試験被験者から得られた末梢血中にあるサイトカインの経時的変化を解析し、同時に病理検体を用いてCD3およびCD4、CD8、CD57陽性細胞の同定やHSV免疫染色などを行っている。まず、臨床試験被験者血清のCytometric Bead Array (CBA)フローサイトメータによる蛋白の多項目同時定量解析では、ヒトサイトカインアッセイキット(Group I、Group II)を用いて、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p40、TNF-α, IFN-γなど50項目のサイトカインについて解析を行った。G47Δ投与後にIL-12、IFN-γが誘導され、G47ΔによるTh1の活性化が確認され、同時にTh2サイトカインであるIL-4やIL-6は抑制されていることも確認された。病理検体においても腫瘍の局所にCD8陽性T細胞や組織球、HSV陽性細胞が認められ、サイトカインの所見と一致した組織像を呈している。今後は因子分析モデルを用いて免疫寛容に対する抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬の最適な投与時期を検討し、Neuro2aの皮下腫瘍動物モデルを用いて最適モデルの実効性を検討する。現在、膠芽腫に対する第II相臨床試験(医師主導治験)が進行中であり、同様にサイトカインの経時的変化を解析して抗腫瘍免疫増強のための治療戦略を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床試験から得られる資料(採血、生検組織)は確保されており、腫瘍免疫学の最新の知見も考慮しながら解析するサイトカインを検討し、解析を進めている。検体数の割に検討すべきサイトカインの項目が多く、最適化した因子分析モデルの選定に時間を要しているが、ここまでは順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
サイトカイン相互作用ネットワークの構築による最適モデルを確定し、適切なサイトカインの付加が必要であるとか免疫チェックポイント阻害薬の投与すべき時期がわかれば、それらを組み込んだ皮下腫瘍モデルを作成し、有効性を検討していく。また感染した腫瘍細胞近傍にのみIL-12等を分泌する“機能付加型”ウイルスを用いた皮下腫瘍モデルも行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床の血液検体を用いてサイトカイン50項目の検討を行っている。しかし、まだ若干の追加項目が必要と思われたため、全体の検討が終了してから追加項目を決定する予定である。実験自体は計画通り順調に進展しており問題はなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
サイトカインの解析からサイトカイン相互ネットワークを構築し、抗腫瘍免疫効果を増強する方法を検討し、その妥当性を皮下腫瘍モデルを用いた動物実験で確認する計画である。次年度使用額は、サイトカインの追加項目のキットを購入するために使用する。
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