研究課題
手術で得られたヒト悪性神経膠腫の癌幹細胞株を樹立したのち、SCIDマウスの脳に移植したヒト悪性神経膠腫モデルマウスを作成した。このモデルマウスに対して、血液脳関門を透過し、かつ、この腫瘍細胞に特異的に取り込まれる2種類の分子標的ペプチド(BT33、BT80)をファージシスプレイ法で同定した。この分子標的ペプチドにゲルダナマイシン(GM)をコンジュゲートしてヒト悪性神経膠腫モデルマウスに投与したところ、GM単独投与に比べて腫瘍細胞に選択的に取り込まれることを確認した。モデルマウスによるin vivoでの効果をMRIで判定したが、GM単独投与と比較してBTを付与した際の抗腫瘍効果の増強は少なかった。原因として、GMにBTをコンジュゲートするとファゴゾームにより腫瘍細胞内部で分解されてしまう可能性が高いと考えた。分子標的剤であるBT-33-GMを効率よくendosome から細胞質に移行させる物質を探索した。BT-GMにPMAPsであるHA2E5-TATを用いると、強い抗がん効果を示すようになったことからendosome-lysosome による治療薬のトラップが原因であることがほぼ確実となった。しかしながらこの分子は難溶性で合成が難しいため、溶媒として特殊なものが必要で毒性が高い可能性があるため、別の手段を探索した。Chloroquineは抗マラリヤ薬として知られているが、この分子はlysosomeに取り込まれると酸性化を抑制し、lysosomeのswellingを起こすこと、ペプチドと比較して分子量は小さく、12個のhistidineペプチドよりもendosome膜の破壊効率は良いとされている。これまでの研究でchloroquineによるendosomal escapeの効果は、予想に反して腫瘍細胞の殺傷効果の増強はほとんど認められなかった。Aureinは現在確認中である。
3: やや遅れている
BTによる選択的抗がん剤の腫瘍細胞への選択的誘導は間違いなくできているが、ファゴゾーム後のエンドゾームからの離脱が難しい。HA2E5-TATは有効でGMと組み合わせることにより優れた腫瘍細胞殺傷効果を示すが、他に有効な分子がないか探索してきた。我々はマラリヤ薬として既に使われているクロロキンがエンドゾームを破壊する作用があることに着目して、これをBT-GM分子に用いたが、思うような効果が得られなかった。効率の良いエンドゾームからの離脱法をさらに検討する必要がある。
ファゴゾーム回避の目的で、MRで造影効果もあるNO radicalを含んだnanoemulsionとBTを組み合わせたものを合成したのち、腫瘍細胞膜との融合によりGMが選択的に取り込まれるシステムを計画している。Nanoemulsionを形成する分子にBT分子をコンジュゲートし標的細胞膜表面に選択的に融合するようにする。Nanoemultion内に含有されているGMを細胞内に放出してその後のがん幹細胞の殺傷を期待する。このnanoemulsionの特徴はT1強調画像で造影効果を示すことで、事前に腫瘍への到達が可能かどうかをMRIで確認できる可能性がある。
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