研究課題/領域番号 |
15K10332
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西原 賢在 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20452493)
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研究分担者 |
篠山 隆司 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10379399)
田中 一寛 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (70467661)
水川 克 神戸大学, 医学部附属病院, 非常勤講師 (80403260)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中枢神経悪性リンパ腫 / STAT3 / IL-10 / JAK |
研究実績の概要 |
中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL)は未だ極めて予後不良であり、新たな治療法が切望されている。PCNSLではIL-10が上昇し、IL-10高値の患者は低値の患者に比べて予後不良である。本研究は、臨床サンプルを用いてPCNSLにおけるIL-10とJAK-STAT経路の活性化との関連性を解析し、さらにJAK阻害薬等を用いて抗腫瘍効果を調べることを目的とする。 40例のPCNSLの組織を用いて、STAT3の発現および活性化を解析したところ、STAT3はほぼすべてのPCNSL組織で強陽性を示し、リン酸化STAT3の発現も確認できた。リン酸化STAT3の発現量を免疫染色でスコア化すると、スコア6(33%)、スコア5(20%)、スコア4(15%)、スコア3(10%)、スコア2(23%)で、平均スコアは4.3と発現量は非常に高かった。IL-10の発現量との関係を解析すると、IL-10発現高値群では有意にリン酸化STAT3の発現が高かった。一方、IL-6やIL-2Rの発現量とは相関性は認めなかった。また、PCNSLの培養細胞(HKBML)を5日間培養すると、その培養液中IL-10の量が増加し、リンパ腫自体からIL-10が分泌されることが分かり、HKBMLにIL-10のリコンビナント蛋白を添加すると、HKBMLのSTAT3の発現量およびリン酸化蛋白量が増加し、IL-10の中和抗体を添加するとSTAT3の活性化が抑制された。したがって、IL-10はPSNALのリンパ腫細胞のJAK-STAT3経路を活性化することが分かった。また、PCNSL組織内の腫瘍関連マクロファージもIL-10を産生、分泌し、PCNSLのSTAT3活性化および予後に関係することが明らかとなった。 一方、PCNSL細胞を皮下に移植して、JAK阻害剤のAZD1480を投与したが、明らかな腫瘍抑制効果は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PCNSLの臨床サンプルを用いて、JAK/STATのリン酸化状態をwestern blotや免疫染色で解析し、IL-10の発現との相関性をみることができた。 PCNSL細胞株を用いて、IL-10投与によるJAK-STAT経路の活性化の程度や、増殖能などについて、in vitroで解析できた。 Negativeな結果であったが、PCNSL細胞の移植マウスモデルにJAK阻害薬を投与し、抗腫瘍効果を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
PCNSLの培養細胞をマウス皮下に移植しても、生着率がやや低く、腫瘍の増大も非常に緩徐であるため、薬剤の効果を十分検討できるマウスモデルを構築する必要がある。また、PCNSLは脳原発のリンパ腫であるため、PCNSLの脳内移植マウスモデルを構築する必要がある。IL-10の下流でJAK-STAT3が活性化されていることが明らかであるため、JAKをターゲットとした薬剤を有効にマウスに投与する手法を確立する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
HKBMLのリンパ腫細胞では生着率が低く、増大速度も遅いため、JAK阻害薬での効果判定に時間を要したため。また、有意な抗腫瘍効果が得られなかったため、別のリンパ腫細胞の樹立など、モデルの構築に時間を費やしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
リンパ腫細胞の樹立と、増大速度の速いリンパ腫脳内移植モデルの確立をした後、様々なJAK阻害剤などで抗腫瘍効果を検討する。
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