研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト血清サンプルを利用してエクソソーム内のグリオーマ幹細胞(GIC)特異的microRNAを同定し、新規治療法および診断マーカーを確立することである。 臨床研究にて膠芽腫患者(13例)とコントロール(健常成人:3例)より採取した血清からエクソソームを単離し、マイクロアレイにて約2,000種類のmiRNAの発現を網羅的に解析した。また、ヒトグリオーマ組織から樹立したGIC(5株)と正常神経幹細胞(NSC)の培養液において既に解析していたmiRNAの網羅的プロファイリング結果とも照合した。 コントロールと比較して、膠芽腫患者の血清中エクソソーム内で有意に発現異常を示したmiRNAは112個(上昇14個, 低下98個)、NSCと比較してGICの培養液中で有意に発現異常を示したmiRNAは211個(上昇77個, 低下134個)であった。血清中と培養液中で共通して有意な発現異常を示したGIC特異的miRNAは19個で、全て発現が低下しており、その中には我々がこれまでに報告してきたmiR-340が含まれていた。これら19個のmicroRNAについて、TargetScanなどを利用して幹細胞マーカーと認識されている各種遺伝子(CD133やSox2など)との相互配列の有無を確認したところ、「真のGIC特異的microRNA」として11個のmicroRNA(miR-18a, -18b, -30a, -30c,-128, -181a, -335, -340, -374a, -374b, -660, -451b, 550a-5p, -652-5p)が同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、追加採取した血清(32サンプル)を含めた解析結果待ちであり、さらに限られた数のグリオーマ幹細胞特異的microRNAを同定できるものと思われる。 また、近年膠芽腫の遺伝子パターンとして注目されている4分類(proneural, neuronal, classical, mesenchymal)におけるmicroRNAの発現の差異についても解析し、予後などの臨床データとの関連も探索する予定となっている。
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