研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト血清サンプルを利用してエクソソーム内のグリオーマ幹細胞(GIC)特異的microRNAを同定し、新規治療法の開発および診断マーカーの確立である。 臨床研究にて膠芽腫患者(術前:29例)とコントロール(健常成人:7例)より採取した血清からエクソソームを単離し、マイクロアレイにて約2,000種類のmicroRNAの発現を網羅的に解析した。また、ヒトグリオーマ組織から樹立したGIC(5株)と正常神経幹細胞(NSC)の培養液において既に解析していたmicroRNAの網羅的プロファイリング結果とも照合した。 16例での初回解析では、コントロールと比較して、膠芽腫患者の血清中エクソソーム内で有意に発現異常を示したmicroRNAは112個(上昇14個, 低下98個)、NSCと比較してGICの培養液中で有意に発現異常を示したmicroRNAは211個(上昇77個, 低下134個)であった。血清中と培養液中で共通して有意な発現異常を示したGIC特異的microRNAは19個で、全て発現が低下しており、その中には我々がこれまでに報告してきたmiR-340が含まれていた。 次に、29例での最終解析では、コントロールと比較して、膠芽腫患者の血清中エクソソーム内で有意に発現異常を示したmicroRNAは69個で、全て発現が低下していた。 これらのmicroRNAについて、TargetScanなどを利用して幹細胞マーカーと認識されている各種遺伝子(CD133やSox2など)との相互配列の有無を確認したところ、「真のGIC特異的microRNA」として2個のmicroRNA(miR-30c, miR-128)が同定できた。
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