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2015 年度 実施状況報告書

神経線維腫症2型はなぜ難病?孤発例神経鞘腫との比較による分子機序解明と治療法開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K10340
研究機関福島県立医科大学

研究代表者

斎藤 清  福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00240804)

研究分担者 森 努  福島県立医科大学, 看護学部, 准教授 (60244373)
岩味 健一郎  福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80534841)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード神経線維腫症2型 / 神経鞘腫 / 遺伝子発現解析
研究実績の概要

神経線維腫症2 型(NF2)は常染色体優性の難病で、神経系に多数の神経鞘腫や髄膜腫が発生するため患者は聴力障害や歩行障害などに苦しみ、長期予後も不良である。NF2 に伴う腫瘍は病理学的に良性であるが、VEGF発現やbevacizumabの効果、成長速度等の点で孤発例とは異なることが知られている。そこで、NF2 に伴う神経鞘腫に特徴的な発現遺伝子群を同定し、新規治療に結びつけることが本研究の目的である。
本学では、TR センターにて摘出した腫瘍の網羅的RNA遺伝子発現解析、全ゲノム解析などを行っている。これらの中から、まず22例の孤発性神経鞘腫と3例のNF2神経鞘腫について遺伝子発現を比較解析した。その結果、残念ながら両群間で統計学的に有意に発現が異なる遺伝子群は同定できなかったが、平成27年度に摘出したNF2神経鞘腫を追加して再度解析を行っている。また、一人のNF2患者から摘出した2個の神経鞘腫、2個の髄膜腫、末梢血について全エクソーム解析を行ったところ、Merlin遺伝子にはR462におけるフレームシフト変異がみられ、変異アレルの出現頻度は各腫瘍で70~80%であり、またmerlin遺伝子のコピー数異常も確認した。
NF2のターゲット遺伝子を同定する別の方法として、研究分担者が開発したab initio 法を用いて遺伝子の相互関係をTCGA データベースに基づいて計算することができる。NF2 と統計学的有意性を持って関連を示す遺伝子のネットワークをこの方法で確認し、NF2 の成長増殖に重要と想定できるkey 遺伝子を抽出した。
また平成27年度には、実験に用いる神経鞘腫SC4細胞株を海外の研究者から譲渡していただいた。追加で行っているRNA発現解析結果とab initio法の結果を合わせてターゲット遺伝子を選定し、平成28年度以降の研究を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでに6例のNF2についてTRセンターで解析を行ったが、1例は腫瘍が小さくて献体不足、2例は高齢者で解析にふさわしくなかった。従って平成27年度には3例のNF2について遺伝子発現プロファイルを22例の孤発性神経鞘腫と比較解析したが、残念ながら両群間で統計学的に有意に発現が異なる遺伝子群は同定できなかった。そこで、平成27年度に新たに摘出した2例のNF2神経鞘腫を追加して、NF2 に伴う神経鞘腫に特徴的な発現遺伝子群を同定するための解析を再度行っている。

今後の研究の推進方策

NF2に特異的に発現しているターゲット遺伝子については、追加で行っているRNA発現解析結果とab initio法の結果を合わせて選定する予定である。ただ、追加の遺伝子発現解析でも孤発例との差が見られなかった場合には、ab initio法で選択したNF2と統計学的有意性を持って関連を示す遺伝子ネットワークの中から、VEGF 関連遺伝子を中心に研究対象とするkey遺伝子を抽出する。
研究に用いる神経鞘腫細胞株SC4は入手した。SC4細胞への遺伝子発現制御を容易にするために、トランスポゾンベクターPiggyBacを改変して単一ベクターでtet応答性発現と発現抑制を可能にしたプラスミドpNonaを用いる。抽出したkey 遺伝子のORFまたはshRNAを神経鞘腫細胞株ゲノムに組み込ませることで、各遺伝子の広いレンジでの調節性発現を行う。NF2 に特徴的なターゲット遺伝子をSC4細胞株で発現増強または抑制することにより、merlin と関連して腫瘍成長増殖に関与しているNF2 に特徴的な分子機序を解明する。
NF2 に特徴的な分子機序を制御して神経鞘腫細胞株の成長を抑制できれば、merlin 以外の新しい遺伝子を分子標的治療のターゲットとして同定することができる。VEGF関連遺伝子もターゲットの一つであると予測している。これらのターゲットに対する標的薬の効果を培養細胞で確認する。腫瘍制御の分子機序に基づく標的薬の開発が期待できる。また、可能であれば研究分担者が開発した頭蓋内腫瘍モデルでも効果を検証し、後の臨床治験への道を開く。
Bevacizumab の効果についても分子機序が解明できると考えている。分子機序と遺伝子発現解析結果からbevacizumab の効果予測が可能かについても検証する。

次年度使用額が生じた理由

研究に用いる神経鞘腫細胞株を購入する予定であったが、平成27年度には海外の研究者から譲渡していただいたために支出が不要となった。また国内旅費を使用しなかったために次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度には、さらに別の神経鞘腫細胞株も入手して研究を進めるために、次年度分として請求した助成金と合わせて使用する計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Association of the SEL1L protein transmembrane domain with HRD1 ubiquitin ligase regulates ERAD-L2016

    • 著者名/発表者名
      Hoshikawa N, Wada I
    • 雑誌名

      FEBS Journal

      巻: 283 ページ: 157-172

    • DOI

      10.1111/febs.13564

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 神経線維腫症II型2015

    • 著者名/発表者名
      齋藤 清,市川優寛,佐久間潤
    • 雑誌名

      Clinical Neuroscience

      巻: 33 ページ: 455-458

  • [学会発表] 神経線維腫症2型に対する治療方針の提案2015

    • 著者名/発表者名
      齋藤 清、市川優寛、岩楯兼尚、佐藤 拓、岸田悠吾、織田惠子、岩味健一郎、神宮字伸哉、山田昌幸、黒見洋介、村上友太、古川佑哉、佐久間潤
    • 学会等名
      第74回社団法人日本脳神経外科学会総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2015-10-14 – 2015-10-16
  • [学会発表] 国内における神経線維腫症2型の現状:臨床調査個人票の解析から2015

    • 著者名/発表者名
      岩楯兼尚、齋藤 清、古川祐哉、山田昌幸、岩味健一郎、神宮字伸哉、岸田悠吾、市川優寛、佐藤 拓、佐久間潤
    • 学会等名
      第25回日本脳腫瘍の外科学会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-09-25 – 2015-09-26
  • [図書] 日本臨牀増刊号 家族性腫瘍学:家族性腫瘍の最新研究動向「Neurofibromatosis type 2(神経線維腫症2型)」2015

    • 著者名/発表者名
      齋藤 清,市川優寛,佐久間潤
    • 総ページ数
      607 (206-210)
    • 出版者
      日本臨牀社

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公開日: 2017-01-06  

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